小川一水

コロナ禍のいま

異星由来のパンデミックに端を発したSF大作『天冥の標』シリーズを10年かけて読み終え、ようやく感想をアップしたのもつかの間、世界はやっかいなパンデミックの猛威にさらされています。これを読んでいた当時はパンデミックSFと同じような状況をよもや実際…

『天冥の標』シリーズ

シリーズ一覧 『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ』(上)早川書房 刊 / 小川一水 著ISBN:9784150309688『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ』(下)早川書房 刊 / 小川一水 著ISBN:9784150309695『天冥の標Ⅱ 救世群』早川書房 刊 / 小川一水 著ISBN:978…

『天冥の標10 青葉よ、豊かなれ』(Part1〜Part3)

ついに完結篇となるシリーズ第10弾は、青葉で始まり青葉で終わる。80歳となった千茅は、生涯友達だった青葉の手紙を孫に見せる。 「立ち止まるな。押し潰されるな。生きられる場所を見つけて生きていけ。あんたたちが消えていい理由は何もない」 『天冥の標1…

『天冥の標9 ヒトであるヒトとないヒトと』(Part1・Part2)

M(メニー・)M(メニー・)S(シープ)を立て直すために、皆で力を合わせるシリーズ第9弾のPart1では、ラゴスが記憶を取り戻し、《救世群(プラクティス)》がセレスで何をしているのかが明らかになる。カドムたちは地表への旅を終え、復活を遂げたアクリラ…

『天冥の標8 ジャイアント・アーク』(Part1・Part2)

シリーズ第8弾のPart1は、シリーズ第1弾をイサリの側から見た物語。ようやく最初の物語に繋がった。両方合わせて読むと事情がよくわかる。また、文字通り暗闇に閉ざされて終わったシリーズ第1弾に、希望の光が差し始める。イサリはM(メニー・)M(メニー・…

『天冥の標7 新世界ハーブC』

惑星セレスの地下シェルターで暮らし始めたスカウトたちの物語。シリーズ第1弾の植民地メニー・メニー・シープの成り立ちと、それを支えた《議会(スカウト)》の物語でもある。手に負えない状況のもと、混乱と凄惨と堕落を極めながらも、たくましく必死で生…

『天冥の標6 宿怨』(Part1〜Part3)

シリーズ第6弾は、Part1〜Part3まであり長い。Part1では、《救世群(プラクティス)》の議長モウサ・ヤヒロの長女イサリ・ヤヒロが、スカウトの少年アイネイア・セアキとスカイシーで出会い、友情を育む。Part2では、イサリと妹のミヒルがセレスを訪れ、テロ…

『天冥の標5 羊と猿と百掬の銀河』

お次は、宇宙を開拓する懸命で可憐な農家の人々と、それを見守る《亡霊(ダダー)》の物語。まずは「百掬」が読めないが、「ひゃっきく」とルビがふられている。たくさん掬(すく)うという意味だろうか。これまで「羊」に展開して偽薬売り(ダダー)と名乗…

『天冥の標4 機械じかけの子息たち』

続いて、《恋人たち(ラバーズ)》のラゴスが誕生する物語。年代は2313年頃。《恋人たち(ラバーズ)》は生体アンドロイドで、人間に性愛で奉仕するために作り出された。ゲストたちの好みに応えるためにコスプレしているせいもあって、やたらとアニメチック…

『天冥の標3 アウレーリア一統』

シリーズ第3弾は、舞台は宇宙へと飛び出してスペースオペラ風に描かれている。おそらく宇宙軍(リカバラー)の物語だ。宇宙海賊エルゴゾーンとそれを取り締まる《酸素いらず(アンチ・オックス)》との間で熾烈な戦いが繰り広げられる。これに木星で見つかっ…

『天冥の標2 救世群』

シリーズ第1弾は、時代があまりに未来へと飛びすぎていて実感が持てなかったが、物語は一転して現代へと戻り、写実的な筆致で描かれる。ちなみに本作が刊行されたのは2010年なので、当時は直近の未来として描かれていた。致死率の高い感染症と戦う、医師と、…

『天冥の標1 メニー・メニー・シープ』(上・下)

ようやく『天冥の標』全17巻を読了。結局全巻を読み直し、さらに疑問があった部分をあちこち読み返した。10年かけた大作だけあって、読み応えがあった。間違いなく傑作だ。感想というか、まずはあらすじをまとめていたのだけれど、時間がかかりそうなので少…

天冥の標 最終巻

『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ Part3 』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150313623 あらすじメニー・メニー・シープという人類の箱舟を舞台にした、《救世軍》たちとアウレーリア一統の末裔、そして機械じかけの子息たちの物語は、ここに大団円を迎…

『天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河』

『天冥の標V 羊と猿と百掬(ひゃっきく)の銀河』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150310509 お気に入り度:★★★★★ あらすじ西暦2349年、小惑星パラス。地下の野菜農場を営む40台の農夫タック・ヴァンディは、調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品…

『天冥の標IV 機械じかけの子息たち』

『天冥の標IV 機械じかけの子息たち』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150310332 お気に入り度:★★★☆☆ あらすじ「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長する…

『天冥の標III アウレーリア一統』

『天冥の標III アウレーリア一統』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150310035 お気に入り度:★★★★☆ あらすじ西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》…

『天冥の標II 救世群』

『天冥の標II 救世群』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150309886 お気に入り度:★★★★☆ あらすじ西暦201X年、謎の疫病発生との報に、国立感染症研究所の児玉圭伍と矢来華奈子は、ミクロネシアの島国パラオへと向かう。そこで二人が目にしたのは、肌…

『天冥の標I メニー・メニー・シープ』(上・下)

『天冥の標I メニー・メニー・シープ』(上) 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:9784150309688 お気に入り度:★★★★★ あらすじ西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠…

『天冥の標シリーズ』

全10巻になる予定で刊行されている、『天冥の標(しるべ)』シリーズ。遅ればせながら読みはじめ、4巻目で追いついたものの、感想を書くのがまったく間に合わないまま早くも5巻目が出てしまった。このシリーズは未だに謎に包まれた部分が多いため、感想が書…

『虚構機関』

『年刊日本SF傑作選 虚構機関』 編者:大森望・日下三蔵 出版:東京創元社 ISBN:9784488734015 お気に入り度:★★★☆☆ あらすじ2007年は、日本SFのゆりかご〈宇宙塵〉創刊からちょうど50年。日本で初めて世界SF大会が開かれた記念すべき年でもあり、新たな出発…

『第六大陸 2』

『第六大陸 2』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:4150307350 お気に入り度:★★★☆☆ あらすじ天竜ギャラクシートランス社が開発した新型エンジンを得て、月面結婚式場「第六大陸」建設計画はついに始動した。2029年、月の南極に達した無人探査機が永久凍土…

『第六大陸』1

『第六大陸 1』 著者:小川一水 出版:早川書房 ISBN:415030727X お気に入り度:★★★☆☆ あらすじ西暦2025年。サハラ、南極、ヒマラヤ―極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る後鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長…