『The 100 / ハンドレッド』シーズン7

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ついに最終シーズンとなった『The 100 / ハンドレッド』。コロナ禍のせいか途中から隔週配信になったため、配信日がよくわからなくなった。また、忙しかったり『Dark』の感想に手間取ったりしていて、すっかり時間が経ってしまった。

シーズン7 あらすじ(ネタバレ)

前シーズンでサンクタムを支配したクラークたちは、プライムで一人生き残ったラッセルを捕らえ、住民たちと共存の道を探る。

しかし早くもトラブルが続出。とりわけ問題の種となったのはラッセルだった。プライムを盲信するサンクタムの「忠誠者」たちと、プライム制度に反対して反乱を起こしていた「ガブリエルの息子」たちは、ラッセルの処遇をめぐって対立し、両者の溝は埋まらなかった。

また、事故の処理で犠牲者が出てしまったため、地球脱出の直前まで敵だった囚人たちからも恨みを買ってしまった。

さらに、「1つの民」の間にも、マディのフレームを取り除いて総帥不在となったことで、亀裂が生じ始めていた。そこに影の総帥シャドゥ・ヘダが出現し、自分が総帥だと宣言。服従しない人々を虐殺し始める。

一方、オクタヴィアが消えた直後、姿の見えない何者かにベラミーが連れ去られてしまった。彼を助けようとしたエコーは、ガブリエルや、オクタヴィアを刺したホープとともに、アノマリーの中へ入る。

3人が出現した先は、空に大きなリングのかかる美しい惑星スカイリング(ペナンス)だった。豊かな自然に満ち脅威もない惑星だったが、この惑星では時間の進み方が極端に早かった。

シーズン6でディヨザとオクタヴィアがアノマリーの内部に入った際に何が起きたのか、当時の状況が明らかになる。

記憶を取り戻したホープによると、ディヨザ・オクタヴィア・ベラミーの3人はバルドで捕まっていた。ホープはディヨザの娘でこの惑星で生まれ育ったが、少女の頃ディヨザとオクタヴィアがバルドへ連れ去られ、2人を助けようと長年奮闘していた。仲間を救うためにエコーたちはバルドへ向かう準備を進める。

バルドでは、「羊飼い」ことビル・カドガン率いる「偉大なる真実の使徒」たちが、異星人であるバルドの先住民の遺した記録を解読しようと、1000年以上も研究を続けていた。

これまでの解読によると、バルドの先住民は飛躍的なテクノロジーを持つ「超越者」に最終決戦を挑み、これに敗北。「超越者」に結晶化させられ、カドガンたちが地球からこの惑星へ来たときにはすでに滅んでいた。アノマリー・ストーンによるワームホール・ネットワークや姿を消すことのできるヘルメットなどは、「超越者」のテクノロジーだった。

ドガンはこの「超越者」に最終決戦を挑み、勝利して人類を「超越」に導こうと、最終決戦に至るコマンドの解読と兵力の強化を進めていた。

抵抗するオクタヴィアの記憶を見て、クラークに埋め込まれていたフレームのことを知ったカドガンたちは、仲間を人質にクラークに協力を要請する。

クラークはカドガンに見覚えがあった。それはフレームに保存されていた歴代の総帥の記憶によるもので、実はカドガンはベッカやグラウンダーの成り立ちにも関わりがあった。また、彼はオクタヴィアたちがプライムファイアの際に避難していたシェルターを作った「第二の夜明け」教団の指導者でもあった。こうした記憶や、彼らが最終決戦を引き起こそうとしていることから、カドガンを信頼することができないクラーク。

一方、「全人類のために」という信念を持って人々を率いてきたカドガンにとっては、仲間や家族を守ろうとするクラークたちの愛情は問題を引き起こす要因でしかなく、両者は対立する。

しかし、エセリアで「超越」した種族の痕跡を見たベラミーの考えは異なっていた。すっかり変わってしまったベラミーは、クラークたちを救おうとするも、理解されない。マディを守るためにクラークは辛い決断を選択せざるを得なかった。

結局、相変わらず危機にさらされ続け、家族や仲間、何よりもマディを守るために戦い続けるクラーク。しかし最終回では多くの仲間たちが満身創痍で死にかけ、実に際どい状況となる。

戦いの果てに

最後の最後で人類の運命を決定づけるのは、これまでリーダーを務めて来たクラークでも、「羊」たちを導いてきたカドガンでもなく、囚人を犠牲にしたことを悔やむレイヴンや、ブラドレイナとして大勢の命を奪った過去から立ち直れずにいたオクタヴィアの自戒を込めた決断だった。オクタヴィアの説得やインドラの決断に、これまでカドガンの教えに盲目的に従ってきた名もない兵士たちも追随する。

自分の愛する家族や仲間のために他者を犠牲にしてきたクラークの生き方も、「超越」という大きな目的のためには他者を犠牲にしても気に留めないカドガンの生き方も否定される。人類は、これまでの生き方を変えることができるし、時間がかかるかもしれないが正しい道を選択できるという期待によって、かろうじて許される。

だが、クラークは今回も手を汚してきた代償をただ一人支払う羽目になり、取り残されてしまった。

私から見てもクラークはあまりにも性急に犠牲を出しすぎる。報復ではなく正義だとクラーク自身は自らを正当化するが、感情に任せて殺したり暴力を振るうのは、やはり報復でしかない。家族や仲間の死を受け入れることがあまりにもできないクラークは、そのことで周囲に犠牲を強いてしまう。

また、クラークが守ろうとする仲間の範囲は自分の都合で適宜変わってしまう。これが相変わらずクラークの身勝手なところで、以前にも自分の母親を救うためにジェレミーの恋人を犠牲にしたが、今回も娘として愛しているマディを救うためには同じ仲間の一員であっても他の人々は平気で犠牲にし、「仕方なかったの」と弁解する。他の仲間達も何故かクラークには甘く、理解して許してしまう。

とはいえ、クラークだけが取り残されてしまうのは、さすがに報われなさすぎる。彼女を孤立から救ったのは、彼女が守ってきた人々だった。人類が他には誰も存在しない、自然の蘇った地球で、彼らは今度こそ平和に暮らせることだろう。だがこの結末はハッピーエンドと言えるのだろうか。

似た者同士?

人類の存亡をテーマとし、人類という種を滅ぼしかねない危機的な状況を何度も乗り越えてきたこのドラマは、最終的にアーサー・C・クラーク作『幼年期の終り*1のような結末となった。今にして思えば、主人公の名がクラークだったのは作者へのオマージュだったのかもしれない。

だが、果たして人類はこれで良いものなのか。争いに次ぐ争いの末、自分たちの住む環境を破壊しつくし、それを自分たちの手では解決できず、超越的な力を借りて人間ではない何かになる。本当にこれで良いのか。自分たちの手でなんとか平和を築いて共存する道はなかったのか。それに、狂ったAIによる光の街は拒絶して、選択の余地がなかったとはいえ、異星人の審判による「超越」は受け入れるのか。

そもそもこの「超越者」も狂ってないか。その種族に属する大勢の中から、コマンド入力したというだけでたった1人を代表者とみなして「審判」し、自分たちの審判基準に合えば種族全体を「超越」して同化させ、基準に合わなければ滅ぼす。同化による単一化や肉体を失うことが本当に進化と言えるのかどうか疑問だし、即座に「超越」させてしまうのはあまりにも乱暴すぎる。

このように考えてみると、「超越者」は実はクラークたちにかなり似ているように思えてきた。

クラークは行く先々で脅威となる相手と出会い、危機に対処しようと相手を排除。その過程で生活環境がこれまでより悪化してしまう。最終的には勝利したクラークが相手の生活環境を乗っ取って、生き残りの少数を自分たちに同化させる。だが、考え方が異なりすぎて敵対するものはすべて滅ぼす。もしくは、後で離反されて滅ぼす羽目になる。いつも乗っ取って同化させるか滅ぼすかの二者択一なのだ。多様性を許容して共存することは一切無い。

こうしてみると、クラークがベラミーに行った仕打ちにも納得がいく。彼はクラークの許容可能な範囲から外れて敵対してしまった。だから選択肢は1つしか無かったのだ。マディを守るためというのも詭弁でしかなく、別ルートからあっさり秘密が漏れたことからも、これが言い訳に過ぎないことがわかる。影の総帥がいる以上、秘密をばらされるのは目に見えていたはずだ。

このドラマは主人公がバイセクシャルで、ダイバーシティに配慮したように見えるが、その割には、その背景に流れる思想は多様性を否定している。

設定が混乱する原因は

隔週配信で間が空いたことや複雑なストーリー構成から、設定も途中でよくわからなくなった。

一番わからなくなったのが、アノマリーを通って他の惑星へ移動するときに記憶が失われるという設定。記憶が失われる場合と失われない場合があり、設定が無視されているのかと混乱したが、何度か見直してようやくその原因がわかった。

シーズン7−5でレヴィッドは、「時間の流れが遅い惑星へ行くときの副作用」があるためヘルメットで保護しなければ記憶が失われる、と説明している。だが、この説明は音声の場合のみで、字幕ではただ単に「惑星へ行くときの副作用だ」となっているのだ。最初は音を消して字幕のみで観ていたためにわからなかった。ここは字幕でカットしてはいけない設定ですよ!

整理すると、時間の流れが早い惑星から遅い惑星へ行く場合は記憶が失われるが、遅い惑星から早い惑星や、同じ早さの惑星へ行く場合には、ヘルメットが無くても記憶は無くならない。

ヘルメットの有無と記憶の有無の状況から判断すると、各惑星の時間の流れる早さの相関は、以下のようになる。

惑星の時間の流れ

早い← ペナンス > バルド=エセリア > サンクタム=ナカラ=地球 →遅い

また、これ以外にもカドガンと彼の娘のエピソードや、シーズン6でオクタヴィアがアノマリーに消えてから出てくるまでの状況を説明するエピソードなどは、かなり唐突でわかりにくかった。

それに、ツッコミどころが多いエピソードや適当すぎる設定も実にたくさんある。

  • ほぼ冷凍睡眠しているカドガンしかコマンドを知らないアノマリーの接続先が、消える間際のアノマリーの接続先と同じなのはどうなのか。これまでうっかり飛ばされて、戻れなかった人はいなかったのか
  • アノマリーストーンの設置場所があまりに不便すぎる。とんでもない場所だったり、一方通行だったり、ストーン同士が離れ過ぎていたりと、実用に向かない
  • 使徒たちは「超越者」のテクノロジーに完全に依存しているのに、「超越者」に最終決戦で勝てるわけないのでは。彼らの訓練もジェム9の前には完全に無力
  • 惑星ベータが判明した割にはたいした役割がなく期待はずれだった。そもそもエリギウス号で向かった先にアノマリーストーンが偶然あるだろうか
  • 使徒たちが1000年以上も研究してきた文書を、ド素人のジョーダンが少し見ただけで覆してしまうのは、韓国語に似ていたとしても都合が良すぎる

とはいえ、ドラマ自体は基本的にピンチに次ぐピンチを切り抜ける物語でスピード感があって面白かったし、キャラも存在感があって魅力的だった。シーズン7はSF的な要素も増して楽しめた。ベッカのテクノロジーがシリーズ全般を通じて大きく関わっていたのが良かったし、シャトルで地球に降り立った彼女のその後やグラウンダーの成り立ちとの関わりも判明して、物語全体が繋がった。

個人的にはシーズン7はラッセルの変貌ぶりや殺陣シーンが楽しめた。殺陣シーンのかっこよさはシリーズ全般を通してこのドラマの魅力の一つだ。また、最終回でアビーやレクサなど、懐かしの面々が登場したのもファンサービスとして良かったと思う。

*1:中高生の頃に読んだきりなのでうろ覚えだが