『DUNE/デューン 砂の惑星』

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映画『DUNE/デューン 砂の惑星』オフィシャルサイト 大ヒット上映中!

古典的な名作SF『デューン 砂の惑星』が、映画『ブレードランナー 2049』を製作したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって新しく映画化され、10月15日より公開されている。原作自体も長いため約2時間半と長めの映画だったが、長すぎるというほどでもなく、画面に引き込まれて終わりまで楽しめた。映像の美しさや音楽の素晴らしさを堪能するためにも、ぜひともIMAXの映画館で観たい作品だ。

1984年にもリンチ監督により映画化

映像化が困難と言われてきたこの作品は、1984年にもデヴィッド・リンチ監督によって映画化された。こちらも何度か観たように思うが、浮遊するハルコンネン男爵のゲテモノっぷりと、その甥役のスティングの存在感が強烈過ぎて、他がすっかり霞んでしまった。

おかげで主役ポールの記憶が全く残っていなかったのだが、改めて調べてみると、後に『ツイン・ピークス』でもリンチ監督に起用されていたカイル・マクラクランがポールを演じ、これが彼のデビュー作だった。色々と賛否が別れた作品だったようだが、私としてはこれはこれで面白かった。

美しい異世界の情景

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって新しく製作された映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、最新の特撮技術を駆使し、実に美しい作品に仕上がっている。惑星や風景の美しさもさることながら、宇宙船や建築物、室内装飾や衣装など、デザイン・美術・音楽などがハイレベル。カタチはシンプルで装飾も抑えて無駄がなく、質実剛健な印象だ。それでいて、スケール感が圧倒的で重厚感がある。例えば単純に兵士たちが並んでいるだけのシーンでも、壮大な人数で表現したというだけで印象的なシーンに仕上がっている。

色彩は色味を抑えた無彩色に近いトーンで統一されている。リンチ版は監督の個性際立つキッチュな極彩色が印象に残っていたが、ヴィルヌーヴ版はこれとは対象的だ。薄暗い室内、重厚な壁の質感、硬そうな家具類、薄曇りの空に一面の砂漠や無機質な岩肌など、アースカラーや陰影の濃淡でシックに表現。抑えたライティングに、スポットライトやシルエットが効果的に使われている。彩度を抑えた色調なので、砂漠の民フレメンの特徴的な青い眼球がよく映えている。

特撮技術の完成度も高い。画面の中に違和感なく自然に溶け込んでいる。皆が期待していたであろう羽ばたき飛行機「オーニソプター」はトンボのようなデザインで、なかなかいい感じに仕上がっている。ちゃんと羽ばたいていたし、尻尾の部分がタラップになっていて、ここから乗り込むという設定も実用的だ。

遥か未来で救世主誕生の物語

物語の舞台は今より1万年以上先の遥かな未来。人類は銀河へと進出し、宇宙帝国が築かれ、皇帝が統治している。しかし、貴族同士の抗争は熾烈で、油断すると命を落としかねない権謀術数渦巻く危険な情勢だ。

主人公のポールはレト・アトレイデス公爵の一人息子。いずれはアトレイデス家を継ぐ立場として、幼い頃から身を守るためのさまざまな訓練を受けてきた。

アトレイデス家は惑星カラダンを統治してきたが、宿敵であるハルコンネン家が統治していた惑星アラキス(通称砂の惑星デューン)を引き継ぐよう、皇帝から勅命を受けた。陰謀を疑いつつも、故郷のカラダンから砂の惑星デューンへと赴任してゆくレト公爵。

デューンは帝国にとって重要な惑星だ。というのも、抗老化作用を持つ貴重な香料スパイス「メランジ」が、宇宙で唯一この惑星でのみ採掘できたからだ。メランジの精製は莫大な富をもたらしてきた。しかし、それ以外ではこの惑星は一面を砂漠で覆われた水の貴重な不毛の大地で、砂漠の砂の中には砂蟲サンドワームと呼ばれる山のように巨大で危険な生物も棲息していた。

この砂漠に順応できたのは先住民族フレメンのみで、彼らは砂漠の洞窟シエチに住み、危険なサンドワームですら〈シャイ=フルード〉と呼び崇拝していた。彼らは独自の文化や言い伝えを持ち、眼はメランジの作用によって白眼まで青く染まっていた。

ポールの母親であるレディ・ジェシカは、ベネ・ゲセリットという女性のみの団体に所属していた。人間の能力を訓練し、精神を発展させようと古くから活動を続けてきた特殊な教育機関で、彼女たちは為政者の血統を慎重に調整することで、平和な宇宙を実現しようとしていた。

また、ベネ・ゲセリットでは身体能力を高める独特の技術が継承されていた。本来は女性にしか教えてはいけない技術だが、レディ・ジェシカは息子のポールにこれを教えていた。

ベネ・ゲセリットには救世主〈クウィサッツ・ハデラック〉に関する言い伝えがあり、それは彼女たちの能力を受け継ぐ男性だとされていたため、レディ・ジェシカはポールにそれを期待していた。ポールの能力を確かめるために、ベネ・ゲセリットから教母が訪れ、苦痛を伴い命を落としかねない危険な試験をポールに受けさせる。

デューンへ赴く前から、ポールはデューンの情景やフレメンの少女、フレメンの持つ特殊な短剣などを予知夢で見ていた。教母はポールにその夢について尋ねる。しかし、ポールの予知夢には血まみれの手や横たわる武術師範の姿なども登場し、不吉な未来を暗示していた。

デューンへ到着したポールたちは、やがてハルコンネン男爵(巨漢でその体重を支えるため重力中和技術で浮いている)や皇帝の陰謀に巻き込まれ、身内の者による裏切りに遭う。

囚われの身となり、オーニソプターで移送されるポールとレディ・ジェシカ。何とか砂漠へ逃れた二人の前に現れたのは、ポールの夢にも登場した、青い眼球を持つフレメンの少女だった。

ポール役のティモシー・シャラメがイケメンで存在感がある。線は細く女性的だが、戦闘訓練で見せる身のこなしなどは力強く、いずれ英雄となるにふさわしい実力を感じさせる。

原作の影響力

リンチ版の『デューン』は異色すぎたためあまり意識しなかったけれど、原作に忠実なヴィルヌーヴ版を観ると、『スター・ウォーズ』シリーズや『風の谷のナウシカ』など、原作がいかに他の作品に影響を与えてきたかを実感させられる。影響を受けた作品もまた傑作揃いだという点でも、原作のすごさがよく分かる。

本作ではポールは、追われて逃げ延びフレメンたちと合流したところで終了している。ハルコンネン家との確執にもまだ決着が付いていない。続編を製作することが無事決定したということなので、次の作品を楽しみにしていたい。

映画概要

原作

原作を読んだかどうかよく覚えていない。読んだとすればリンチ版の映画を観た後だろう。メランジの正体を知っているから読んだのではないかと思うが、映画で描かれていたためかもしれない。いずれにせよ、本そのものはうちにはなかったので、改めて購入して読んでいるところだ。読み直した上でもう一度映画を観たい。

あらすじ

アトレイデス公爵は皇帝の命を受け、惑星アラキスに移封されることになる。過酷な砂漠の惑星アラキスは、抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の産地である。宿敵ハルコンネン家に代わりそこを支配することは、表面的には公爵家に大きな名誉と富を約束する。皇帝やハルコンネン男爵の罠だと知りつつ、公爵は息子ポールの未来のため惑星アラキスに乗り込むが……ヒューゴー・ネビュラ両賞受賞の壮大な未来叙事詩を新訳で!

あらすじ

ハルコンネン男爵の策謀により、アトレイデス公爵は不慮の死をとげ、再度アラキスは男爵の手に落ちてしまう。公爵の世継ぎポールは、巨大な砂蟲が跋扈する危険な砂漠へ母ジェシカとともに逃れ、砂漠の民フレメンの中に身を隠すことになる。しかしこの過酷な環境と香料メランジの大量摂取が、時間と空間を果てしなく見通す超常能力をポールにもたらした。彼はフレメンの伝説の救世主、ムアッディブとして歩みだすことに!

あらすじ

そして復讐のときがきた。フレメンの一員と認められたポールは、その超常能力から、預言者ムアッディブとしてフレメンの全軍勢を統率する立場になっていた。ハルコンネン家の圧政とポール指揮下のフレメンの反撃に、惑星アラキスは揺れる。状況を危惧した皇帝とハルコンネン男爵は、軍団を引き連れ、ふたたび惑星へと降り立つが……。映画化・ドラマ化され、生態学SFの先駆けとしても知られる伝説的傑作。

【ネタバレ】徹底解明! 『TENET』の難解なカーチェイスシーン

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時間SFとして、時間を逆行するというアイデアが斬新な映画『TENET テネット』。しかし、逆行した人物と順行(通常の時間の流れ)の人物が同時に行動しているため、何がどうなっているのか非常にわかりづらくなっている。

おそらく一番わかりづらいのが、逆行するセイターと主人公とのカーチェイスシーンだ。カーチェイスそのものはそうでもないのだが、登場人物の時間の流れが一度観ただけではよくわからない。何度も観直し、登場人物それぞれのタイムラインを整理してようやく全体の流れがつかめてきた。

以下は完全にネタバレなので、観終わった方のみどうぞ。

登場車種

まずはカーチェイスのシーンで登場する車種とそれに乗る主な人物の整理から。がんばってナンバーまで確認した。

  • AUDI(黒・945CW2):セイター・セイターの部下(運転)・キャサリン
  • BMW(濃グレー・293W2P):主人公・ニール(運転)
  • Mercedes(グレー・807B3T):セイターの部下[ボルコフ](運転)
  • Saab(シルバー・930C7W):当初は謎

※色は光の具合でわかりづらいので、だいたいのイメージ
※[ ]内は推測
※車に詳しくないので違っていたらご容赦を。見分けるのもたいへんだった

AUDI:逆行と順行がシンクロしながら同時に進行

一番混乱するのがAUDIだ。なぜなら、これに乗るセイターと部下の運転手は逆行だが、拘束されているキャサリンは順行だからだ。しかも、逆行と順行が同時に進むからわかりにくい。

キャサリンが順行だという根拠は以下の通り。

  • 酸素マスクを付けていない
  • 言葉が逆さまになっていない
  • ドアを開けるなどの動きが順行
  • 青い部屋で酸素マスクをつけている
  • 全身を赤で統一している

この作品では青は逆行赤は順行と色分けされているので、ここまで全身を赤のスーツとパンプスで固めているのは彼女が順行だという象徴のはず。

また、逆行している人物は、外に出るときは酸素マスクが必要となる。青い部屋は逆行した人のためのエアロックになっているので、順行のキャサリンは逆に酸素マスクが必要となる。

キャサリンから見た時間の流れ

キャサリンから見た時間の流れを整理すると以下のようになる。

キャサリンのタイムライン


  1. キャサリンはボルコフ運転のMercedesでセイターとフリーポートに到着。AUDIで待機する逆行の運転手を目撃
  2. 倉庫内部でセイターから暴行を受ける
  3. AUDIに乗せられ、フリーポートを出発]
  4. AUDI車内でセイターに銃を突きつけられる。セイターはBMWに乗る主人公を脅してカウントダウン
  5. 主人公がセイターに「プルトニウム241」の橙色ケースを投げる
  6. ケースを手に入れたセイターと運転手が走行中のAUDIからMercedesに乗り移る
  7. キャサリンAUDIに1人取り残されるも、主人公がBMWから乗り移り、激突前にAUDIを停車
  8. [ボルコフが]MercedesをAUDIにぶつけて停車。キャサリンと主人公はボルコフや部下たちにAUDIから降ろされる
  9. キャサリンと主人公は[Mercedesに乗せられ]フリーポートへ連行される*1
  10. キャサリンはセイターに倉庫の青い部屋へ、主人公は部下たちに赤い部屋へ連行される
  11. キャサリン青い部屋でセイターに撃たれる

※[ ]内は推測

Mercedesの運転手ははっきり映っていないが、おそらくボルコフだ。そう推測する根拠は後で述べるが、最初にセイターがキャサリンを連れてフリーポートに来た時もボルコフがMercedesを運転していたので、彼の運転と考えるのが妥当だと思う。いずれにしても順行だ。

セイターから見た時間の流れ

一方、セイターはキャサリンの時間軸に対し、未来から過去へ向けて絡んでくる。AUDIを運転する部下はセイターとほぼ同じ動きだ。セイターたちから見た時間の流れは以下のようになっている。番号はキャサリンと対応させた。

セイターのタイムライン


  1. セイターはMercedesでキャサリンを連れてフリーポートへ到着
  2. 倉庫内部でキャサリンを暴行
  • カーチェイスの間中、情報収集
  • 部下たちが捕らえてきた主人公を赤い部屋で尋問するが、応援部隊の到着で「回転ドア」へ逃走。AUDI運転手も「回転ドア」へ
  • 〜セイターたちはここから逆行〜
  1. セイターが「回転ドア」から青い部屋に入ると、キャサリンが瀕死の状態で椅子に寄りかかっていた。ガラス越しに主人公を脅しながら彼女を立ち上がらせ、銃で撃つ
  2. 弾が抜けて傷が消え、キャサリンは撃たれる前の状態に。セイターは彼女を連れて[Mercedesに乗り込む]
  3. 銃撃戦の場所へ到着してMercedesを降り、[キャサリンを降ろす]
  4. BMWダッシュボードを確認
  5. Mercedesに戻り、[銃撃戦の場所からカーチェイスの場所へ移動]
  6. 走行中、橙色ケースが窓からMercedes車内に入ってくる。このケースを持って、セイターは運転手とともにMercedesからAUDI*2に乗り移る
  7. 橙色ケースがセイターの手から飛び、BMWに乗る主人公がキャッチ。直後、セイターはSaab車内に逆行の主人公を見つける
  8. BMWに乗る順行の主人公を脅すために、セイターは[カウントアップし]キャサリンに銃を突きつける。その後Saabを転倒させて火をつける
  9. [フリーポートに戻ってキャサリンAUDIから降ろし、自分も降りる]
  10. 運転手がAUDIで待機し、セイターを待つ
※[ ]内は推測

実はセイターはカーチェイス後の主人公がフリーポートへ連れて来られるまで、ずっとここで情報収集をしていた。赤い部屋で主人公を尋問し始めた直後、ニールの呼んだ応援部隊に襲撃され、部下たちと「回転ドア」へ逃走、そのまま逆行する。

青い部屋にはぐったりしたキャサリンがいたので、主人公をガラス越しに脅しながら彼女を撃つ。するとキャサリンは時間を遡り撃たれる前の状態に。歩けるようになったキャサリンを連れて、銃撃戦の場所へ。ニールが降りた後のBMWで「プルトニウム241」(以下241)を探すも見つけられず、カーチェイスへと向かう。

順行と逆行が同時に進行

感覚としてわかりにくいのは、順行と逆行が同時に進行していることだ。例えば、「3」で順行のキャサリンAUDIに乗せられてフリーポートを出発し、この後カーチェイスに巻き込まれる。一方、逆行したセイターは、すでにカーチェイスは終了し、フリーポートへ戻ってキャサリンAUDIから降ろしている。時間の向きと出来事の解釈は両者で異なるが、起きている出来事自体は一致する。 キャサリンとセイターの間では、こうしたことがシンクロしながら同時に起きていた。

順行の時系列では、

フリーポート→カーチェイス→銃撃戦→フリーポート

だが、逆行の時系列でも

フリーポート←カーチェイス←銃撃戦←フリーポート

なのだ。

【ネタバレ】セイターは「241」をいつ回収したのか

「241」をセイターが回収するシーンは、映画の中では描かれていない。だから想像するしかないのだが、これがなかなかの難題だった。

「241」の隠し場所

まずは、順行の主人公が「241」を隠した場所から。

カーチェイスの際、順行主人公は「241」の入っていた橙色のケースをセイターに投げた。これには実は本体は入っていなかった。映像をよくよく見ると、主人公が橙色のケースを投げた直後にほんの一瞬、「241」を自分の手元に引き寄せている様子が映っている。実に短い時間なので、動体視力がいいか、スロー再生が無いと気付けない。

また、主人公は「BMWダッシュボードに隠した」とセイターに教えたが、これも実は嘘だった。ではどこに隠したのか。これは逆行した主人公の視点によって徐々にわかってくる。

逆行した主人公は外に出て、フリーポートに停められていたSaabに乗り込んだ。橙色ケースには、セイターに投げる前に発信機が仕込まれていたようだ。ニールからこれの受信機を受け取った主人公は、追跡してケースを見つけ、おそらく盗聴器を仕込んだ。ケースを見張っていると、やがてMercedesの窓に飛び込んだ。主人公はこの車を追い始める。

しばらくするとSaabは、順行主人公の乗るBMWと逆行セイターの乗るAUDIに挟まれた。すると車内でカラカラと銀色のものが飛び跳ね始め、転がりながら飛び出ていった。実はこれが「241」だ。順行主人公は逆行した自分自身が運転していたSaabに「241」を投げ込んでいたのだ。しかし、AUDIとすれ違った際にセイターにこのことを気づかれてしまった。

だが、「241」の隠し場所がバレたとしても、セイターがこれをすぐ回収できるわけではない。なぜなら、飛び出した「241」はそのまま順行主人公がキャッチし、やがてアクロバティックな動きでウクライナ警察の警備する移送車に収納してしまうからだ。

Saab転倒後にセイターが放火しているから、なんとなくこの時「241」を持ち去ったように見えるが、実際には車内のどこにも見つけられなかったはずだ。

では、セイターはいつ「241」を回収したのか。おそらく、逆行主人公が乗り込む前のSaabの中で見つけたはずだ。では、乗り込む前のSaabはどうなっていたのか?そもそもSaabの時間の流れはどうなっているのか?

タイムラインの整理

結局、関係する人や車の時間の流れをそれぞれ表にして、出来事を相互に対応させたタイムラインを作成することになった。車種とナンバーを確認し、停車位置から判断して、誰がどの車に乗っていたかということもだんだん見えてきた。冒頭の車種やタイムラインはこうして割り出したものだ。

整理してみて面白かったのは、銃撃戦の場所からフリーポートへ移動した時の状況だ。キャサリンを激突から救った主人公はボルコフたちに捕らえられ、フリーポートへ連れて行かれた。運転はボルコフだが、後部座席にはキャサリンとセイターが、助手席にはAUDIの運転手が乗っていたと思われる。

こうしたことは、逆行したセイターがMercedesから降りてBMWダッシュボードを確認している様子などから細切れに確認できる。

Mercedesは、主人公が停車させたAUDIにぶつかりながら停車し、その後ボルコフと他の部下がAUDIから主人公とキャサリンを引きずり出した。停車位置をよく見ないと気づかないが、実はセイターもこれと同じMercedesから出てきてBMWの車内を確認し、また戻っている。このMercedesの運転席の外にはボルコフが立ち、助手席には逆行した部下(おそらくAUDI運転手)の姿が見える。右隣にはAUDIが停車している。こうしたことから、Mercedesを運転していたのはボルコフで、セイターとAUDI運転手が一緒に乗ってフリーポートから来たことがわかる。セイターとAUDI運転手はこの後(順光の世界ではこれ以前)、キャサリンが一人取り残された状態になったAUDIに乗り移るために、Mercedesでカーチェイスの場所へ向かわなければならない。

さらに、銃撃戦の場所でAUDIから降ろされたキャサリンが乗せられている車は、よく見るとこれもAUDIの隣に停められたMercedesだ。一方、主人公はというと、フリーポートでボルコフの監視のもとで引っ張り出されている様子から見て、トランクに入れられていたと推測できる。また、主人公は柵越しにキャサリンとセイターを目撃している。こうしたタイミングから考えても、実は同じMercedesにみんなが乗っていたと考えられる。

SaabとAUDIは「回転ドア」を通ったのか?

Saabに投げ込まれた「241」の行方を考える上で避けて通れないのが、Saab自体の時間の流れだ。後ろ向きに走っているため、Saabは逆行しているように見える。しかし、これは回転ドア」を通ったからなのか?

タリンの「回転ドア」はオスロ空港の「回転ドア」よりもかなり広いので車も通れそうだ。段差スロープも設置されているし、おまけに赤い部屋にはカバーを掛けた車まで置かれている。これが悩ましい。

もしAUDIやSaabが「回転ドア」を通ったとすると、どのタイミングで通ったのか?

まず、基本的なことから整理すると、回転ドア」を通って逆行したものは、再び「回転ドア」を通して順行に戻さない限り、これ以降の時間軸から消えてしまう。また、タリンの「回転ドア」はアイブスの部隊に制圧されたから、セイター達が逆行させたのだとしたら、制圧されるより前のはずだ。主人公が赤い部屋へ入れられてから制圧されるまでは連続で描かれているので、それより前ということになる。

AUDIの場合、起きた出来事の時間の流れから考えると、逆行させたら銃撃戦の場所まで移動させなければならない。主人公は銃撃戦の場所からフリーポートまで連れてこられているので、やはりこれと同じくらいの時間がかかるだろう。それを考えると、セイターたちがAUDIを逆行させたのなら、主人公が赤い部屋へ入れられる直前くらいしかタイミングはない。

Saabについてはどうだろうか。主人公は逆行した直後にこれに乗り込んだ。またこの時、逆行した直後のセイターには鉢合わせしていない*3。ということは、 Saabの逆行はセイターの逆行よりも後ということになる。つまりセイターたちにSaabを逆行させる機会はなかった。では、未来のアイブスの部隊が主人公のためにSaabを逆行させたのだろうか?だが、その場合、逆行したセイターたちが「241」を回収できないのではないか?アイブスたちが車内の「241」に気づかずにSaabを逆行させたということがあるだろうか?

逆行した人が動かしたものはどう動くのか

SaabもAUDIも「回転ドア」を通っていないとしたらどうだろうか?そもそも、逆行した人が逆行していないものを動かすとどうなるのか?逆行したときと同じように時間を遡ることは可能なのか?

逆行弾について主人公に説明した科学者は、逆行させた弾を普通に動かす(テーブルに置く=未来方向に動かす)こともできたし、逆行させる(落とした状態から手の中に戻す=過去方向に動かす)こともできた。だとすると、物体を逆行させなくても、逆行した人物が動かせば、逆行したかのように動くのか?

Saabに乗りこんだ逆行主人公は、 Saab自体の時間軸の未来に向けて関わったはずだ。車が爆発したことからもそれは明らかだ。もし過去へ向けて関わったのなら、Saabをここに停車した人物に鉢合わせていたか、ずっと停車していたなら動くことさえなかったはずだ。

一方、AUDIの場合、セイターたちは順行キャサリンが1人で乗っているAUDIにMercedesから乗り移った。AUDIの時間軸はどちら向きかはっきりしないが、少なくとも彼らはキャサリンの時間軸に対しては、未来ではなく過去へ向けて関わった。SaabとAUDI(もしくはキャサリン)では少なくともこの点が異なっている。

逆行した人が他の人や物に関わる際、未来へ向けて関わるか、過去へ向けて関わるかはどうやって決まっているのか?

前出の科学者は、「意志は関係ない?」と聞く主人公に、「(時間軸の?)向きはどうであれ、あなたの手で起きた」と答えている。つまり意志によって、その物体を過去方向に動かすか、未来方向に動かすかを決定できるということだろうか?

順行の物でも逆行した人が動かせば逆行させたように動かせる、という前提でタイムラインを整理し直してみると、誰かが車を逆行させる必要がないから無理な点が無くなった。AUDIもSaabも順行のままだったが、逆行した人が動かしたために、逆行したかのように動いていた。この解釈でどうだろうか。

同様の事例がないか確認してみた。一番わかりやすいのはスタルスク12の廃墟だろう。逆行したブルー班が爆破したビルの壁の一部は、地面に落ちていたが、順行の主人公の足元で浮かび上がって壁にはまり、彼は足元をすくわれそうになった。ビルはさすがに「回転ドア」を通っていないはずだ。つまり、逆行した人が力を加えると、物体は逆行しているかのように動くことができる。逆行した人が運転すると、まさにSaabのように逆行して動くのではないか。

この前提で整理したのが一番最後に掲載した、「【ネタバレ】詳細タイムライン」の表だ。

順行のSaabは、逆行した主人公が乗り込み運転したことで逆行し始めた。本当にそれが可能かどうかうまく想像ができないが、これ以降の時間軸からSaabは消え、これ以前の時間軸では、フリーポートに停車していたものと逆行主人公がカーチェイスしていたものの、2台になったと思われる。逆行主人公のSaabが転倒して爆発した頃、彼が乗り込む以前のSaabはそのままフリーポートに置かれていたのではないか。

AUDIの時間軸ははっきりしないが、キャサリンと同様、順行だったと考えるのが自然だろう。AUDIはフリーポートから高速道路へと移動し、乗り移った主人公のブレーキで停車した。この流れの途中、逆行したセイターたちが未来ではなく過去へ向けて、乗り移り運転し始めたことで、AUDIは順行と逆行が交差し、重ね合わされた状態になった。このためAUDIはSaabと異なり逆行せず、2台にならなかったし、これ以降の時間軸にも存在していた。セイターたちはAUDIに乗って逆行したまま、キャサリンが出発したフリーポートへ到着した。こういう解釈でどうだろうか。

【結論】セイターは「241」をいつ回収したのか

こうして改めて整理したことで、セイターが「241」をいつ回収したのか、無線で話していた逆さまの言葉が何だったのか、なぜ順行のセイターが「241」の隠し場所を知らなかったのかなど、さまざまな疑問も解けてきた。

Saabに逆行した主人公が乗っているのを目撃したセイターは、この車に追突して転倒させた。そしてBMWに乗る順行の主人公が自分にケースを投げるようキャサリンに銃を向けて脅した後、転倒したSaabの元に戻り放火。車内には当然「241」は無いので、フリーポートで待機している部下に無線で連絡して、Saabが今現在どこにあるのかだけを確認。情報収集していた順行のセイターも、だから「241」がどこにあるのか知らなかった。まさか自分たちが所有しているSaabにいつの間にか入っていたとは思いつきもしなかっただろう。

おそらくSaabはずっとフリーポートに置かれていたため、セイターはキャサリンを乗せたままフリーポートまで戻り、彼女を降ろす(キャサリンから見ればこのタイミングでAUDIに乗せられる)。と同時に、ボルコフにもMercedesでカーチェイスに向かうよう指示。また、セイターは自らSaabの車内を確認し、「241」を回収した。

キャサリンがセイターと一緒に最初にフリーポートに到着した時、逆行した部下がAUDIの車内で一人で待っていたのは、その間に逆行したセイターがSaabから「241」を回収していたからだ。セイターはBMWダッシュボードも自分自身で確認していたから、Saabの車内も部下に任せず自分で探したのだろう。

実を言うと、AUDIがなぜフリーポートに戻ったのだろうかと疑問に思っていた。彼らは高速道路からフリーポートへ戻らずそのまま逃げてしまえば良かったし、キャサリンを連れ出す役目もボルコフのMercedesで十分だったはずだ。しかし、セイターにはフリーポートに戻らなければならない決定的な理由ができた。「241」の回収だ。このため、キャサリンを連れ出したのは最初からAUDIで、最初からセイターたちと一緒だったということがはっきりした。逆行のセイターにしてみれば、フリーポートに寄った際AUDIにキャサリンが乗っていたため、ここで降ろしたというだけなのかもしれない。

【ネタバレ】詳細タイムライン


youtu.be

*1:セイターとAUDI運転手も同乗、キャサリンは後部座席に、主人公はトランクに

*2:セイターから見ると、AUDIは停止した状態から走り出し、主人公がBMWに乗り移り、キャサリンが一人で乗っている状態になる

*3:実のところ、主人公は逆行したセイターを追い越してしまっている。なぜなら、もう少し待っていれば「回転ドア」を通った直後のセイターが現れたはずだからだ。道端で橙色ケースを見張らなくても、セイターたちが逆行して現れるのを隠れて待っているだけで、楽に追えたはずだ。もっとも、アイブスたちがそれまで待たずに順行に戻ってしまったのは、制圧以前は「回転ドア」がセイターたちの支配下にあって危険だったということなのかもしれないし、残りのアルゴリズムを集めさせるための作戦だったのかもしれない

『TENET テネット』〜斬新な映像が魅力の時間SF〜

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もしも時間を逆向きに進むことができたらどうなるか。このアイデアを膨らませ、過去へ逆向きに遡る時間(逆行)と、未来へ通常通りに進む時間(順行)を同時に絡ませ、斬新な映像で描いてみせたのが、クリストファー・ノーラン監督のスパイ映画『TENET テネット』だ。

私は最初、Netflixで半分寝ながら観たのだが、これは失敗だった。この映画は一瞬たりとも目を離してはいけない作品だった。一回観ただけでは把握できず、確認のために何度も観直した。しかも0.5倍速で。スロー再生の機能を使ったのは初めてだ。

過去へ遡るという時間SFはこれまでにもあった。しかし、「時間を逆向きに進む」というアイデアの作品はこれまで見たことがない。この映画では、時間を逆行するものは逆再生のように見える。人も車も後ろ向きに進む。銃を撃てば壁にあった弾痕が消えて撃たれる前の状態に戻り、銃弾が銃口から入り、空の弾倉に収まる。

設定は面白いが、テクノロジーとしては実用的ではない。逆行するには「回転ドア」と呼ばれる装置を通る。つまり、「回転ドア」まで行かないと逆行できない。また、1時間前へ逆行するためには1時間かかる。遡りたい時間と同じだけの時間が必要だ。しかも逆再生の状態で動くため、トラブルを避けるには順行社会と断絶して過ごさないと難しい。言葉も逆さまになるので、逆再生する機器が無いと順行側とは話せない。さらに、逆行中は普通に呼吸すらできず呼吸用のマスクや密閉した空間が必要になる。致命的なのは、うっかり「回転ドア」が使えない状況に陥ると、一生順行に戻れないことだ。一人でどんどん時を遡ってしまう。呼吸用マスクやボンベ、食料が尽きたらおしまいだ。おそらく長期間の逆行は難しいだろう。

色々考えると使い物にならなさそうなテクノロジーだが、映像としてはとても面白い。しかも、逆行側と順行側を絡ませてビジュアルで見せるというアイデアが秀逸だ。逆行した人間と順行の人間との格闘では、順行側が殴っているさなか、逆行側がありえない姿勢でバク転して起き上がり、遠くから武器が飛んできて手に収まるといった具合。これまで見たことのない映像で見応えがある。

同じシーンを順行側と逆行側から2回見れるのも面白い。逆行側から見るとまるで違って見えてくる。起きた出来事の順序が逆になるし、例えば「押している」シーンが実は「引っ張っている」シーンだったとわかる。方向性が異なると解釈も変わってくる。

また、2回目のシーンでは、最初は見過ごしていた映像が、実は主要人物の重要な行動だったと明かされることがある。意識してから改めて観直すと、1回目のシーンでも最初からそれが映っていたと気付く。1回しか観ないのはもったいない作品だ。

アクションシーンはやたら大がかりだ。本当にストーリー上必要?と思えることも多い。例えばビルにバンジー跳びでの侵入や、オスロ空港での飛行機の激突などだ。無駄に派手すぎて、目的が途中でわからなくなる。それでも、エンターテイメントとして十分楽しめる。

改めて何度か観ると、派手な演出の一方で映像がめちゃくちゃ計算され尽くしていることに驚く。これを撮影するためには、シナリオも細部まで徹底的に練りあげて作り込まれたはずだ。そして、それを極限まで削ぎ落としている。描かれていない部分も多く、だから分かりづらくなっている。けれども、観る人にはそんな計算された緻密さなどは感じさせず、よくわからなくても派手なアクションとして純粋に楽しめる作品になっている。そこがすごい。

ざっくりあらすじ

名前すら明かされない主人公は、「人類が生き残るための国家を超越する任務」に抜擢された。しかし、任務に関する情報は「TENET」という言葉と左右の指を交差させる仕草のみ。何も知らされないまま任務に就く主人公。やがて明らかになってきたのは、世界を破滅させる未来の兵器の存在だった。

アルゴリズム」と呼ばれるこの兵器は、時間を逆行して未来から送られてきた。一方、これを起動させようと目論む未来人もいて、武器商人セイターはこれと契約。兵器を未来へ送り届けようとする。セイターを阻止するために、主人公と仲介役のニール、息子を取り戻したいセイターの妻キャサリンたちは時間を逆行。主人公とニールはアイブス率いる部隊に加わり、兵器の奪還を試みる。時間の前と後から同時に進行する挟撃作戦が圧巻だ。

また、主人公とニールの自己犠牲もいとわない友情が感動的。真の主役はイケメンニールかもしれない?

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【ネタバレ】派手で見応えのあるシーンの連続

物語はオペラハウスのテロ事件から始まる。しかしこれはテロに偽装した襲撃で、CIAのスパイが持つ「荷」を狙ったものだった。主人公は、素性がバレたこのスパイを保護し、「荷」を回収。さらに観客を救おうと、特殊部隊が仕掛けた爆弾の解除に奔走する。主人公はここで逆行する銃弾を初めて目撃する。敵に撃たれかけていた主人公は、この逆行弾で何者かに命を救われた。派手に爆発するオペラハウス。

その後、「人類が生き残るために国家を超越する任務」に抜擢された主人公は、逆行する銃弾について研究している科学者から情報を得る。彼女のもとには未来から、壁に打ち込まれた逆行弾や、いずれ起きる戦争の残骸などが送られていた。時を超える兵器は未来だけでなく過去も変えることができると、彼女は第三次世界大戦が起きるのを危惧していた。

インドを牛耳る大物武器商人がこの弾に絡んでいることを突き止めた主人公は、寄越された仲介役のニールと計画を立て、武器商人のビルにバンジー跳びで侵入する。妻のプリヤはイギリス在住のロシア人の武器商人セイターにこの弾を売ったことを明かす。

続いてセイターに紹介してもらうために、主人公はその妻キャサリン接触。彼女は贋作事件に巻き込まれ、セイターに証拠を握られ脅されていた。主人公はセイターへの紹介を求め、キャサリンを助けるために、贋作が保管されているオスロ空港の美術品保管倉庫「フリーポート」の襲撃を計画する。

ニールの立案した計画は、倉庫に飛行機をぶつけ、目を逸らすために金塊をばら撒くという派手なものだった。金庫室の中心にある五角形の小部屋を目指した主人公とニール。しかし、人の気配があり、奥の回転する扉から逆行する人物が飛び出してきた。主人公はこの人物と格闘するも、意表を突く動きに翻弄され、逃げられてしまう。

主人公から話を聞いたプリヤは、ここの金庫室にあったのは逆行を可能にする未来の装置「回転ドアだと教える。

【ネタバレ】高速道路で走行しながら強奪! 241は誰の手に?

キャサリンの紹介でセイターのクルーズ船に乗船した主人公。プリヤの発案により、セイターがオペラハウスで狙っていた「プルトニウム241」の強奪を持ちかけた。現在ウクライナ警察がこれを保管、移送される予定だった。主人公は途中のタリンで奪う計画を立てる。大型車4台を駆使し、高速道路を走行しながら強奪するという大掛かりな作戦が実施される。

しかし、セイターはこれを横取りしようと、キャサリンに銃を突きつけ主人公を脅す。ここから実に複雑なカーチェイスが繰り広げられる。順行と逆行が複雑に入り混じっているため、タイムラインを整理しても、非常にわかりにくいのだ。

カーアクションとしては見応えがあり、純粋に楽しめる。バックで疾走する車とのカーチェイスや、激突しそうなキャサリンの救助、さらにバックで走る謎の車も乱入し、転倒状態から起き上がって走り始める。セイターの部下たちと銃撃戦も繰り広げられ、手に汗握る展開だ。

だが、主人公とキャサリンは捕らえられ、セイターの武器保管用の倉庫「フリーポート」へ連れて来られた。「プルトニウム241」の在りかを聞き出そうと、セイターはまたしてもキャサリンに銃を突きつける。

増援部隊の到着で主人公は助けられたものの、セイターはここの「回転ドア」で過去へと逃走、キャサリンは撃たれて死にかけていた。キャサリンを救うために、主人公とニールも彼女を連れて逆行する。

さらに主人公は過去のキャサリンが殺されないよう、逆行状態で外へ出る。先程バックで走っていた車に乗り込み、逆行するセイターを追跡。過去の自分と逆行するセイターとのカーチェイスに参入する。先程のカーチェイスが逆行視点で再現される。だが、結局はセイターに「プルトニウム241」の在りかを悟られ、車は炎上。「プルトニウム241」も奪われてしまう。

【徹底考察(予定)】カーチェイスシーンタイムライン

かなり苦労したが、カーチェイスのシーンは人物ごとのタイムラインや誰がどの車に乗っていたかなどを徹底考察し、だいたい把握できた。長くなりそうなので後日掲載する予定だ。

【ネタバレ】壮大な挟み撃ち作戦

オスロ空港へ向かうコンテナ船内で気が付いた主人公は、ニールから「プルトニウム241」が「アルゴリズム」の一部であり、その機能は世界全体を逆行させることだと教えられる。

順行へ戻るために、1週間前に飛行機が激突した直後のオスロ空港へ到着した主人公とニールは、キャサリンをストレッチャーに乗せ、「フリーポート」内部にあった「回転ドア」を目指す。先に侵入した主人公を待ち受けていたのは、かつての自分自身だった。格闘する逆行主人公と順行主人公。逆行視点でかつての格闘が再現される。ストレッチャーにキャサリンを乗せたニールもこれに続く。

順行に戻りプリヤと会った主人公は、キャサリンの命の保障を求める。セイターはアルゴリズムを9つ全て集め、未来へ送り届けるために、故郷のスタルスク12で地中深くに埋めようとしていた。オペラハウス襲撃の日にここで起きた爆発がこれを埋めるためのものと気付いた主人公は、ニールとともにアイブスの部隊に加わり逆行する。キャサリンも逆行し、一家でバカンスを楽しんだベトナムのヨットに乗船。逆行してきたセイターがここに現れると睨み、キャサリンが時間稼ぎをする計画だった。

部隊はスタルスク12で順行のレッド班、逆行のブルー斑に分かれ、時間の前からと後からの挟撃作戦を実施する。主人公はレッド班の別ユニットとしてアイブスと共に地下トンネルから爆発地点を目指し、爆発前にアルゴリズムを奪還、ニールはブルー班として情報収集と敵の除去を実施する予定だった。戦闘開始で突撃するレッド班と、戦闘を終えて撤退するブルー班が入り混じる。さらにこの廃墟にも敵の「回転ドア」があるため、敵も順行と逆行で応戦する。順行と逆行それぞれの、敵と味方が入り乱れて戦闘を繰り広げる、複雑な戦闘シーンだ。

逆行ならではのビジュアルが面白い。ビルの破片が舞い上がり、壊れたビルが元に戻る。それと同時に同じビルの別の箇所が爆撃される。ここまで来るともはや、敵に攻撃されているのか未来の仲間に攻撃されているのかわからない。

ニールは作戦の途中、主人公を救うために順行に戻る。主人公を追いかけ装甲車で疾走するニール。この装甲車が実は戦闘の最初のシーンにしっかり登場している。このように、事情を知ってから観直すとさらに楽しめる。

作戦終了後、ニールは一人さらなる任務に赴くために逆行する。友情の終わりを告げ主人公と別れるシーンが実に切ない。

回文形式

『TENET』というタイトルは、右から読んでも左から読んでも同じように読める回文になっている。これと同様に物語自体も回文のような構成になっている。

オペラハウスでのテロ事件

オスロ空港

高速道路でのカーチェイス

逆行

高速道路でのカーチェイス

オスロ空港

オペラハウスと同日のスタルスク12作戦

言うなればこれも、物語の前からと後ろからの挟み撃ちだ。だから最初に戻って何度も観直すことになってしまうのだ。

CAST・STAFF

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STAFF