『DUNE/デューン 砂の惑星』

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映画『DUNE/デューン 砂の惑星』オフィシャルサイト 大ヒット上映中!

古典的な名作SF『デューン 砂の惑星』が、映画『ブレードランナー 2049』を製作したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって新しく映画化され、10月15日より公開されている。原作自体も長いため約2時間半と長めの映画だったが、長すぎるというほどでもなく、画面に引き込まれて終わりまで楽しめた。映像の美しさや音楽の素晴らしさを堪能するためにも、ぜひともIMAXの映画館で観たい作品だ。

1984年にもリンチ監督により映画化

映像化が困難と言われてきたこの作品は、1984年にもデヴィッド・リンチ監督によって映画化された。こちらも何度か観たように思うが、浮遊するハルコンネン男爵のゲテモノっぷりと、その甥役のスティングの存在感が強烈過ぎて、他がすっかり霞んでしまった。

おかげで主役ポールの記憶が全く残っていなかったのだが、改めて調べてみると、後に『ツイン・ピークス』でもリンチ監督に起用されていたカイル・マクラクランがポールを演じ、これが彼のデビュー作だった。色々と賛否が別れた作品だったようだが、私としてはこれはこれで面白かった。

美しい異世界の情景

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督によって新しく製作された映画『DUNE/デューン 砂の惑星』は、最新の特撮技術を駆使し、実に美しい作品に仕上がっている。惑星や風景の美しさもさることながら、宇宙船や建築物、室内装飾や衣装など、デザイン・美術・音楽などがハイレベル。カタチはシンプルで装飾も抑えて無駄がなく、質実剛健な印象だ。それでいて、スケール感が圧倒的で重厚感がある。例えば単純に兵士たちが並んでいるだけのシーンでも、壮大な人数で表現したというだけで印象的なシーンに仕上がっている。

色彩は色味を抑えた無彩色に近いトーンで統一されている。リンチ版は監督の個性際立つキッチュな極彩色が印象に残っていたが、ヴィルヌーヴ版はこれとは対象的だ。薄暗い室内、重厚な壁の質感、硬そうな家具類、薄曇りの空に一面の砂漠や無機質な岩肌など、アースカラーや陰影の濃淡でシックに表現。抑えたライティングに、スポットライトやシルエットが効果的に使われている。彩度を抑えた色調なので、砂漠の民フレメンの特徴的な青い眼球がよく映えている。

特撮技術の完成度も高い。画面の中に違和感なく自然に溶け込んでいる。皆が期待していたであろう羽ばたき飛行機「オーニソプター」はトンボのようなデザインで、なかなかいい感じに仕上がっている。ちゃんと羽ばたいていたし、尻尾の部分がタラップになっていて、ここから乗り込むという設定も実用的だ。

遥か未来で救世主誕生の物語

物語の舞台は今より1万年以上先の遥かな未来。人類は銀河へと進出し、宇宙帝国が築かれ、皇帝が統治している。しかし、貴族同士の抗争は熾烈で、油断すると命を落としかねない権謀術数渦巻く危険な情勢だ。

主人公のポールはレト・アトレイデス公爵の一人息子。いずれはアトレイデス家を継ぐ立場として、幼い頃から身を守るためのさまざまな訓練を受けてきた。

アトレイデス家は惑星カラダンを統治してきたが、宿敵であるハルコンネン家が統治していた惑星アラキス(通称砂の惑星デューン)を引き継ぐよう、皇帝から勅命を受けた。陰謀を疑いつつも、故郷のカラダンから砂の惑星デューンへと赴任してゆくレト公爵。

デューンは帝国にとって重要な惑星だ。というのも、抗老化作用を持つ貴重な香料スパイス「メランジ」が、宇宙で唯一この惑星でのみ採掘できたからだ。メランジの精製は莫大な富をもたらしてきた。しかし、それ以外ではこの惑星は一面を砂漠で覆われた水の貴重な不毛の大地で、砂漠の砂の中には砂蟲サンドワームと呼ばれる山のように巨大で危険な生物も棲息していた。

この砂漠に順応できたのは先住民族フレメンのみで、彼らは砂漠の洞窟シエチに住み、危険なサンドワームですら〈シャイ=フルード〉と呼び崇拝していた。彼らは独自の文化や言い伝えを持ち、眼はメランジの作用によって白眼まで青く染まっていた。

ポールの母親であるレディ・ジェシカは、ベネ・ゲセリットという女性のみの団体に所属していた。人間の能力を訓練し、精神を発展させようと古くから活動を続けてきた特殊な教育機関で、彼女たちは為政者の血統を慎重に調整することで、平和な宇宙を実現しようとしていた。

また、ベネ・ゲセリットでは身体能力を高める独特の技術が継承されていた。本来は女性にしか教えてはいけない技術だが、レディ・ジェシカは息子のポールにこれを教えていた。

ベネ・ゲセリットには救世主〈クウィサッツ・ハデラック〉に関する言い伝えがあり、それは彼女たちの能力を受け継ぐ男性だとされていたため、レディ・ジェシカはポールにそれを期待していた。ポールの能力を確かめるために、ベネ・ゲセリットから教母が訪れ、苦痛を伴い命を落としかねない危険な試験をポールに受けさせる。

デューンへ赴く前から、ポールはデューンの情景やフレメンの少女、フレメンの持つ特殊な短剣などを予知夢で見ていた。教母はポールにその夢について尋ねる。しかし、ポールの予知夢には血まみれの手や横たわる武術師範の姿なども登場し、不吉な未来を暗示していた。

デューンへ到着したポールたちは、やがてハルコンネン男爵(巨漢でその体重を支えるため重力中和技術で浮いている)や皇帝の陰謀に巻き込まれ、身内の者による裏切りに遭う。

囚われの身となり、オーニソプターで移送されるポールとレディ・ジェシカ。何とか砂漠へ逃れた二人の前に現れたのは、ポールの夢にも登場した、青い眼球を持つフレメンの少女だった。

ポール役のティモシー・シャラメがイケメンで存在感がある。線は細く女性的だが、戦闘訓練で見せる身のこなしなどは力強く、いずれ英雄となるにふさわしい実力を感じさせる。

原作の影響力

リンチ版の『デューン』は異色すぎたためあまり意識しなかったけれど、原作に忠実なヴィルヌーヴ版を観ると、『スター・ウォーズ』シリーズや『風の谷のナウシカ』など、原作がいかに他の作品に影響を与えてきたかを実感させられる。影響を受けた作品もまた傑作揃いだという点でも、原作のすごさがよく分かる。

本作ではポールは、追われて逃げ延びフレメンたちと合流したところで終了している。ハルコンネン家との確執にもまだ決着が付いていない。続編を製作することが無事決定したということなので、次の作品を楽しみにしていたい。

映画概要

原作

原作を読んだかどうかよく覚えていない。読んだとすればリンチ版の映画を観た後だろう。メランジの正体を知っているから読んだのではないかと思うが、映画で描かれていたためかもしれない。いずれにせよ、本そのものはうちにはなかったので、改めて購入して読んでいるところだ。読み直した上でもう一度映画を観たい。

あらすじ

アトレイデス公爵は皇帝の命を受け、惑星アラキスに移封されることになる。過酷な砂漠の惑星アラキスは、抗老化作用を持つ香料メランジの唯一の産地である。宿敵ハルコンネン家に代わりそこを支配することは、表面的には公爵家に大きな名誉と富を約束する。皇帝やハルコンネン男爵の罠だと知りつつ、公爵は息子ポールの未来のため惑星アラキスに乗り込むが……ヒューゴー・ネビュラ両賞受賞の壮大な未来叙事詩を新訳で!

あらすじ

ハルコンネン男爵の策謀により、アトレイデス公爵は不慮の死をとげ、再度アラキスは男爵の手に落ちてしまう。公爵の世継ぎポールは、巨大な砂蟲が跋扈する危険な砂漠へ母ジェシカとともに逃れ、砂漠の民フレメンの中に身を隠すことになる。しかしこの過酷な環境と香料メランジの大量摂取が、時間と空間を果てしなく見通す超常能力をポールにもたらした。彼はフレメンの伝説の救世主、ムアッディブとして歩みだすことに!

あらすじ

そして復讐のときがきた。フレメンの一員と認められたポールは、その超常能力から、預言者ムアッディブとしてフレメンの全軍勢を統率する立場になっていた。ハルコンネン家の圧政とポール指揮下のフレメンの反撃に、惑星アラキスは揺れる。状況を危惧した皇帝とハルコンネン男爵は、軍団を引き連れ、ふたたび惑星へと降り立つが……。映画化・ドラマ化され、生態学SFの先駆けとしても知られる伝説的傑作。