『ダーク』家系図

https://occ-0-988-993.1.nflxso.net/dnm/api/v6/6AYY37jfdO6hpXcMjf9Yu5cnmO0/AAAABeu5Oz4CGncoVEvCDhLelkyQc7H0KsaLyauqCprkOTTePn46kiFYRe1AUg5UkCp9ka7RTgyc8mKrSy7w9VFeQDokfmzy.jpg?r=077

www.netflix.com

シーズン1と2は、登場人物たちの家系図がどうなっているのかが大きな謎だった。もちろん、シーズン3でもそれは変わらないのだが、家系図は一旦分かってしまえばそれで終わるので、ストーリーの整理の方に興味は移り、家系図は後回しになってしまった。

年表のページと同様、ヨナスが元々いた世界を「アダム世界」、異世界から来たマルタが元々いた世界を「エヴァ世界」、実験の成功で分割される前の世界を「起源の世界」として説明する。

完全にネタバレなので、続きは試聴済みの方のみどうぞ。

エヴァ世界の人々

シーズン3でヨナスが訪れたエヴァ世界では、ミッケルは過去へ遡らず、そのためヨナスも生まれなかった。ヨナスが住んでいた家には、マルタたちニールセン家の人々が住んでいた。しかし、ウルリッヒはカタリーナと離婚し、家を出て再婚。相手はハンナで、なんとウルリッヒとの子供を妊娠し、出産間近だった。

にもかかわらず、ウルリッヒはこちらの世界でも絶賛浮気中。相手はこれもびっくり、警察署の同僚シャルロッテ。しかし、これまでの印象が強すぎて、2人の恋愛シーンには非常に違和感が…。ちなみにこちらの警察署では、シャルロッテではなくウルリッヒが署長を務めているようだ。

ティーデマン家では、レジーナがすでに亡くなっていた。息子のバルトシュはそのせいか暗い雰囲気。マルタを口説く状況ではなかったようで、マルタは演劇仲間のキリアン・オベンドルフと付き合っていた。キリアンは行方不明となったエリックの弟で、アダム世界でもマルタと共演している。そしてバルトシュの父で原発所長のアレクサンダー・ティーデマンは、キリアンの父ユルゲン・オベンドルフの手を借りて、事故の残物の処理を進めている。

ドップラー家では、シャルロッテは家を出てペーターと別居し、代わりにペーターの父ヘルゲが同居しているようだ。彼はこちらの世界では耳ではなく左目が潰れている。また、こちらではエリザベートは普通に会話ができ、フランツィスカが手話で会話している。

ペーターの職業はこちらでは牧師で、トランスジェンダーも娼婦もしていないらしきベンジャミン(ベニ)・ウェラーの相談に乗っている。彼の兄弟で警官のトーベン・ウェラーは、眼は問題ないが片腕が無い。

そして、これまで登場していなかった人物がシーズン3で登場した。口に傷のある、少年、中年、老人の謎の男たちで、常に3人で行動している。彼らは主にアダム世界のさまざまな時代へ行き、殺人や脅しを繰り返している。しかも3人の仕草がシンクロしていて不気味だ。

また、アダムに対抗してこちらの世界でタイムトラベラーたちを牛耳っているのが老女エヴァで、顔に斜めに大きな傷跡がある。ヨナスが歳をとってアダムとなったように、こちらの世界ではマルタがエヴァとなる。

ヤバすぎる血縁関係

シーズン3では、これまで謎に包まれていた血縁関係がほぼ明らかになった。これによって改めて、そのヤバさも明るみに。以下が整理してみた家系図だ。エヴァ世界がまるまる増えたため、作り直した。

通常の家系図は上が先祖で下が子孫だが、タイムトラベルで逆転することがあるので、親から子へ向けて矢印を入れてみた。

まず、シーズン2で明かされたシャルロッテエリザベートの関係のように、先祖と子孫の関係がめちゃくちゃだ。彼女たちのループが最強ではあったが、それ以外も問題のある関係だった。キリスト教的にはかなりタブーに踏み込んでいるのではないだろうか。

案の定、 4つの家系は1つに繋がった。まず、シーズン2までに明らかになった家系図のネタばらしから。

ヨナスの父親のミハエルは、行方不明となったニールセン家の末っ子ミッケルだった。マルタはヨナスにとっては伯母にあたり、ハンナは夫の父親と浮気していたことになる。

タンハウスの養女だったシャルロッテは、実の父親はノアで、母親はシャルロッテの下の娘エリザベートだった。時間移動することで、自分の娘が自分自身を産むという、なんとも異様な事態が発生していた。

父親だったノアの正体については、これまで謎に包まれていた。シーズン2では若いノアが登場し、トロンテの母(ウルリッヒの祖母)アグネスと兄妹であることまでは明かされていた。シーズン3では ノアの父母についても明らかになる。

ノアの父親はなんと、中年ヨナスに救出されて過去へ遡ってしまったヨナスの友人バルトシュだった。シーズン2でバルトシュは、自分が何をすべきかノアから聞いていないと言っていたが、彼の使命はノアの父親になることだった。

そして、問題はノアの母親だった。シーズン1のラストで未来へ行ったヨナスは、顔に傷のある少女に殴られていた。印象的だった彼女はシーズン3でようやくシリヤという名前が明かされた。このシリヤが後に過去へ遡ってバルトシュの妻となり、ノアとアグネスの母親となる。

ヤバいのはそのシリヤの両親だ。彼女の母親はなんと1954年に遡ったハンナ。ということは、アグネスの息子トロンテも、その息子のウルリッヒも、さらに息子のミッケル=ミハエルも、みな彼女の子孫ということになる。また、シリヤは父親の違うヨナスの妹だということに。ノアはヨナスの甥であり、アグネスは姪だった。

そしてシリヤの父親は、これもなんとクラウディアの父エゴンだった….。バルトシュは自分の祖母の腹違いの妹と結婚したことになる。

さらに、アグネスの夫が実は全ての家系の要だった。ヨナスはシーズン3でエヴァ世界へ行き、何も知らないエヴァ世界のマルタと終末を阻止しようと奮闘する。彼女と一夜を過ごしできてしまった息子が、実はアグネスの夫だった。マルタの孫は祖父トロンテ……。ここでも家系図は先祖と子孫がループしてしまった。

マルタのこの息子にはなぜか名前すら付けられず、エヴァ家系図に∞という記号で記されているのみ。息子のためにここまで奮闘するなら、もう少し普通の人間らしい生活を送らせてあげた方が良かったのではと思う。歳をとったマルタであるエヴァは、タイムトラベルのループを保つために、障害となる人々をこの息子に殺害させる。実際に手を下すのは中年の∞だが、少年の∞にも同行させて手伝わせている。自分の子供にさせることではない。

また、この∞は両方の世界のアグネスとの間に、息子のトロンテを授かっている。これもどういう状況なのか、なかなか想像がつかない。両方の世界を∞が行き来していたのだろうか?

深読みの魅力

『ダーク』のシナリオは、徹底的に細部にこだわって描かれているため、深読みするのが面白い。何気なく描かれていたことでも、事情が明らかになってから観直すと、実はすごく計算されていたことが分かり驚かされる。

例えばカタリーナの両親だ。

シーズン3でようやくカタリーナの旧姓が判明した。カタリーナ・アルバースだった。彼女の母親へレーネ・アルバースについては、1954年へ遡ったハンナと闇医者で出会っていたというエピソードが印象的だった。しかしへレーネはシーズン2からすでに登場していた。ウルリッヒの監禁されている精神科病棟の受付として、エゴンが訪れたときにもう登場していたのだ。

シーズン3で1987年に遡ったカタリーナがウルリッヒに会うために精神科病棟を訪れ、自分の母親である受付のへレーネと会話したことで、彼女はようやくクローズアップされた。その後の湖でのカタリーナとの結末については衝撃的だった。

しかし、さらに驚かされたのは、シーズン2でバルトシュがすでに、問題の湖にまつわる噂を語っていたことだった。この結末はシーズン2でもう示唆されていた。おそらく遺体はこの後見つけられ、身元不明者として処理されて、噂だけが残っていたのだろう。

また、カタリーナの父親も実はシーズン1から登場していた。エヴァ家系図にはカタリーナの父親としてヘルマン・アルバースの名が書かれていた。誰だかわからなかったが、テロップにこの名前を見つけて驚いた。それには、”Farmer Hermann Albers”と書かれていた。シーズン1-3で羊が33匹死んだとエゴンに語っていた農夫が、実はカタリーナの父親だったのだ。

さらにカタリーナの両親は、シーズン3にも2人揃ってちゃっかり登場している。マッツの葬儀のために人々が集まったニールセン家で、ヤーナがキレるきっかけを作ったのがそうだ。

ちなみに、アルバースという姓がヘレーネの旧姓なのか夫ヘルマンの姓なのかはよくわからなかった。最初の印象では、ヘレーネが闇医者で中絶したのは結婚前に子供ができてしまったからだと思っていたが、アルバースが夫の姓だとすると彼女は結婚後に中絶したことになる。または、アルバースがヘレーネの実家の姓で、ヘルマンはティーデマン家と同様、婿養子だったのかもしれない。


このように、後になってようやく誰だか分かるケースは多い。

シーズン2の冒頭のエピソードも、人物の正体がわかってみれば衝撃的だった。この当時は、まだ誰だかわからない若い男性が、誰だかわからない中年男性をツルハシで殴り殺し、その後、暗躍する謎の中年男性ノアに慰められていた。シーズン2ではその若い男性が若い頃のノアだということまでは分かっていた。シーズン3で相手の人物がようやく判明した。これが中年となったバルトシュだった。

つまりアダムはまだ17歳*1の甥であるノアに、友人である彼の父親を殺させていた。事情がわかってみれば衝撃的だし、なんと業が深いことか。

しかも年表を整理すると、この殺害の翌日、2052年へ行った少年ヨナスが原発のポータルでこの1921年に現れている。村へ行く途中でヨナスがすれ違った葬列は、バルトシュのものではないだろうか。アグネスが葬列に加わらずエルタの宿にいた事情はわからないが、いろいろと妄想の余地がある。両親とも亡くなったノアとアグネスはエルタに引き取られて働かされてたのかもしれない。だからノア=ハンノの苗字がティーデマンではなく、タウバーだったのかもしれない。

ノアの人生を考えてみると、アダムに振り回されすぎていて気の毒になる。自分の父親を殺させられ、少年たちの誘拐や実験に関与させられる。娘は何者かに連れ去られ、最後には実の妹に殺される。全てアダムの差し金だ。当初は不審な人物としか思えなかったノアだが、エリザベートへの愛情は深く、悪い人間ではないと思えてくる。

ジーナの父親

クラウディアはレジーナの父親を明かしていないが、ラストまで観ると誰が父親なのか推察できる。

エヴァ家系図にはジーナの父親はトロンテと記されているが、これは実際には違っている。クラウディアが突き止めた法則では、∞の家系図に属さない者は、両世界の結び目がある限り、生き延びることができない。レジーナが毎回死んでしまうのは、彼女が∞の家系に属さないためだ。つまり∞の息子であるトロンテの子供ではない。このことはトロンテも、クラウディアからレジーナの殺害を頼まれた際に認識していた。

ではレジーナの父親は誰か。これはラストのレジーナの誕生パーティーから読み解ける。ジーナの家族写真にクラウディアと仲睦まじく写っていたのは、ヘルゲの父親で元原発所長のベルント・ドップラーだった。ということは、レジーナの父親はアダム世界でもベルントだったのだ。

考えてみればアグレッシブなクラウディアのことだ。女性初の原発所長の座を手に入れるために、ベルントを色仕掛けで落としていたとしても不思議は無い。これもいろいろと深読みできるポイントだ。

ハンナとウルリッヒの子供

エヴァ世界の終末はかなり駆け足で展開したため、ハンナの身篭っていたウルリッヒとの子供がどうなったのか、よくわからなかった。最初は1911年にアダムの元にシリヤを連れて現れたハンナが、どちらの世界のハンナなのか迷った。シリヤはウルリッヒとの子供ではないかと考えたのだ。でも、エヴァ世界のハンナはヨナスのことを知らないはずだ。だからやはり、アダムの元に来たハンナとシリヤは、アダム世界の人物だ。

では、エヴァ世界のハンナはどうなったのか。終末の際、彼女は下腹部から出血していた。そこに、エヴァから、「過去を築き系図を維持させる」よう指示された老人エゴンが迎えに来る。

おそらくハンナは流産したのだ。そしてこの状態のハンナをエゴンが連れて、きっと球形タイムマシンで過去へ遡り、若い自分自身へ送り届けるのだ。そしてハンナと若いエゴンとの間にシリヤが生まれるのだろう。これがエヴァの指示した「過去を築き系図を維持させる」の意味なのだと思う。エヴァ家系図にも、ハンナとウルリッヒの間には子供はおらず、エゴンとの間にシリヤが書かれている。

起源の世界の人々

ラストのレジーナの誕生パーティーは、正直なところその参加者の意外さに驚かされた。主催のレジーナ、ハンナとその夫トーベン・ウェラー、カタリーナ、ペーターとそのトランスジェンダーの恋人でトーベンの兄弟の、ベニ/ベルナデット/ベンジャミン・ウェラーの6人だ。

特にベニ・ウェラーは顔立ちも変わっていて、最初は誰だかよくわからなかった。何しろウェラー兄弟は毎シーズン登場していたものの、ずっとちょい役だった。しかし、アダム世界とエヴァ世界が両方とも消えたため、∞の家系に属する人々が皆いなくなり、ウェラー兄弟にスポットライトが当たるようになった。

トーベン・ウェラーは以前、ハンナのことを「あんな美人がウルリッヒと浮気なんて」と語っていた。ハンナが執着していたウルリッヒがいなかったことで、彼はハンナと結婚できたのだろう。

また、ウルリッヒがいないため、ハンナとカタリーナは彼を取り合っていがみ合わず、レジーナも木にくくりつけられたりしなかった。3人は友人になれたのだろう。

ペーターはシャルロッテと出会わなかったため、ありのままの自分でいることができ、ありのままのベルナデット・ウェラーと恋人同士となれた。

一方、レジーナはアレクサンダーに助けられる必要がなかったため、結婚はしていない。カタリーナもウルリッヒがいないので、結婚していない。おそらく結婚していればどちらも夫婦で参加していただろう。


それにしてもわからないのは、タンハウスが自分の家族を取り戻そうとしたことが、なぜ彼とは関係の薄そうなヨナスとマルタに波及したのかだ。

乳児のシャルロッテを得たことで、失われた家族を求めるタンハウスの心は満たされたのかもしれない。だが、彼女を得るために、こんなに大勢を巻き込んだパラドックスが必要となるものなのか。この壮大なループはタイムマシンの実験の成功によって一気に生まれたのだろうか。

原因が、ループに苦しむヨナスやマルタではなく、自分のいるべき場所は未来でも過去でもなく現在にあると言い切っていたタンハウスにあると見抜くのは、クラウディアのような優秀な頭脳でなければ難しかっただろう。確かに冷静に考えれば、人為的なタイムトラベルで生じる問題は、タイムマシンを作り出せる人物に起因しているに違いない。ある意味当然の結果だった。

いずれにせよ、マッド・サイエンティストは下手に刺激すると危ないし、事態の打開には優秀な頭脳が欠かせないということだ。また、家族や愛する人が死んでも、自然の摂理と思って諦めることも重要だろう。

シーズン3でこの作品は終了だと思うが、こうした完成度の高い作品をまた製作してもらいたいものだ。

*1:生まれた年が1904年で、この出来事が1921年