『第六大陸 2』

あらすじ

天竜ギャラクシートランス社が開発した新型エンジンを得て、月面結婚式場「第六大陸」建設計画はついに始動した。2029年、月の南極に達した無人探査機が永久凍土内に水の存在を確認、もはや計画を阻むものは存在しないかに思われた。だが、再起を賭したNASAが月面都市計画を発表、さらには国際法上の障壁により、「第六大陸」は窮地に追いやられる。計画の命運は? そして妙が秘めた真の目的とは?―全二巻、完結。

カバーより

 知らない間に2巻目が出ていた。前回が「第六大陸1」だったので、2、3と続くのかと思っていたら、今回が完結篇だった。



 日本の民間企業により月に結婚式場を建設するプロジェクト「第六大陸」は、いよいよ本格的に着工した。しかしさまざまな問題が浮上し、「第六大陸」は窮地に追い込まれる。


 NASAは、それまで主力を注いでいた火星有人探査計画を変更して、月面都市リバティ島の建設計画に切り替えた。しかも建設地は第六大陸と同じクレーター内である。また、アメリカは日本政府に対し、「第六大陸」が国際条約に違反していると告訴した。すっかり大人になった妙の巧みな戦法で何とかそれは切り抜けたものの、ついに致命的な事故が起こり、プロジェクトは暗礁に乗り上げる。常に冷静だった妙が心理的に追い込まれ、青峰走也も妙を理解しきれなくなってしまう。また、マスコミ対策、人材養成、資金繰り、デブリ対策など、問題は山積で、計画は苦境へと追い込まれた。


 妙は自分の心に鬱屈していたものの正体に気付き、人々の声援を広報の一貫としてではなく素直に受け止められるようになったことで、成長する。


 ラストで、1巻から示唆されていた意味ありげな伏線が明らかになる。実際にはこういうことはあり得ないのだろうが、夢とか、ロマンの部分での読者サービスとして楽しめた。もしかしたらこういうこともあるかもしれないと思うとわくわくする。ラストをどう落とすのかと思っていたのだが、こぶりながらきれいにまとまっていたように思う。月ににょきにょき延びて聳え立つ、壮麗なサグラダ・ファミリア。見てみたいものだ。