『天冥の標8 ジャイアント・アーク』(Part1・Part2)
シリーズ第8弾のPart1は、シリーズ第1弾をイサリの側から見た物語。ようやく最初の物語に繋がった。両方合わせて読むと事情がよくわかる。
また、文字通り暗闇に閉ざされて終わったシリーズ第1弾に、希望の光が差し始める。イサリは
Part2では、MMSの真の姿を知った人々が、新しい世界をどうするべきか模索する様子が描かれている。地上の様子を確かめに行くカドムたち一行の冒険と、新政府を樹立したエランカたちがMMSを復興していく様子と、復活を遂げたアクリラの物語が交錯する。
『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク』(Part1)
- 著者:小川一水
- 出版:早川書房
- ISBN:978-4-15-031159-9
- お気に入り度:★★★★★
「起きて、イサリ。奴らは撃ってきた。静かにさせましょう」――いつとも、どことも知れぬ閉鎖空間でイサリは意識を取り戻した。ようやく対面を果たしたミヒルは敵との戦いが最終段階を迎えていることを告げ、イサリに侮蔑の視線を向けるばかりだった。絶望に打ちひしがれるイサリに、監視者のひとりがささやきかける――「人間の生き残りが、まだいるかもしれないのです」。壮大なる因果がめぐるシリーズ第8巻前篇。
カバーよりセレス南極に降着していたハニカムで、イサリはアイネイアを逃した罰として長期間眠らされていたが、皇帝により起こされた。
セレスには
途中、凄まじい光とドロテア戦艦を見た。案内役によると、セレスの中心核に竪坑を掘ってドロテアを入れ、惑星に重力を加えていた。彼の犠牲によって逃げ延びたイサリは、エレベーターでダダーに話しかけられて協定を結び、
そこではあまりにも平和な日常生活が営まれていて、驚くイサリ。しばらく隠れていたが見つけられて追われ、
現在は2803年で、イサリが眠らされて300年も経っていた。人々は《
イサリは事情を正しく知っていると思われた臨時総督に投降し、彼らが
イサリはカルミアンから言葉を習い始め、記憶も共有できることがわかり、急速にMMSの裏事情を把握し始めた。MMSはドロテアから電力を供給し、ダダーがそのことをMMS側にもドロテア側にも隠していた。また、臨時総督ユレイン三世は植民地側でただ一人事情を知り、
こうしたことをいっさい知らないMMSの人々の間では、臨時総督を倒そうとする動きが大きなうねりとなっていた。また、人々はドロテア戦艦をシェパード号だと勘違いしていて、臨時総督から奪おうとしていた。イサリだけは、それでは問題は解決しないとわかっていたが、止められなかった。
カドムとアクリラたちはフォートピークへ出発し、やがてMMSの全土が闇に包まれた。革命後に起きる事態にイサリは備えようとしたが、カルミアンの様子がおかしかった。
ついに
大統領に就任したエランカの一行が来たときには、首都オリゲネスは陥落し、彼女の恋人のラゴスはすでに出発していた。
冬眠状態の
ラストで竪坑に落下した後の痛々しいアクリラが登場している。
思えばずっと眠らされていたイサリは、起きている時間のみで考えるとまだ17歳くらいでしかない。せっかく忠告に来たのに、たいした働きができなくても不思議はない。
『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク』(Part2)
- 著者:小川一水
- 出版:早川書房
- ISBN:978-4-15-031169-8
- お気に入り度:★★★★★
西暦2803年、メニー・メニー・シープから光は失われ、邪悪なる《
アクリラは食事をしながら話を聞いていた。しかし、その内容はとんでもないものだった。アクリラは何度も耐え難い目に合わされていた。
カドムは一命をとりとめた。フォートピークから脱出した人々は、ここがセレスの地下空間に作られた都市だとイサリから聞かされ、実際に見て確かめるために地表へ行くことにした。
カドム、ラゴス、イサリのほか、《
カドムは道中、対立するメンバーをまとめ上げ、話をし、イサリからも身の上話を聞く。ラゴスは本物のシェパード号を見つけて昔の記憶を取り戻そうとしていた。
一方、エランカはクルミが伝えたこの世界の真の姿を発表した。MMSは準惑星セレスをくりぬいた地下空間にあり、臨時総督府はそれを隠して地下から来る
政府を立て直し当面の食料や電気を回復させたが、
街を取り戻したものの、
カランドラとのやりとりで、《
地表を目指すカドムたち一行は、襲ってくる自動修復機械や
たどり着いた地表の宇宙港で数日探したが、シェパード号は見つからなかった。帰途についた一行は、イサリが見つけたリンゴの木から手がかりを得た。アイネイアの家が面していたコニストン湖がリンゴの先に広がっていた。
しかし
一方、アクリラは危機を脱し、上へ向かって走り出した。途中、年代物の同胞の服とコイルガンを見つけて身につける。真の敵はオムニフロラだった。彼が出たところは真空で、宇宙には2つの恒星が
まだ本調子ではないが、ようやくアクリラが復活した。最初から個性際立つ元気が良いキャラだっただけに、彼が活躍しないと勢いがつかない。だが、彼が遭わされた仕打ちは相当ひどい。このシリーズは、実はかなりエログロ満載なのだが、エロはシリーズ第4弾で不動だろうが、グロはここが一番ひどいかもしれない。
それにしても、300年経っても狭量な倫理観を押し付けてくる