『天冥の標IV 機械じかけの子息たち』

あらすじ

「わたくしたち市民は、次代の社会をになうべき同胞が、社会の一員として敬愛され、かつ、良い環境のなかで心身ともに健やかに成長することをねがうものです。麗しかれかし。潔かるべし」――純潔チェイス遵法ロウフルが唱和する。「人を守りなさい、人に従いなさい、人から生きる許しを得なさい。そして性愛の奉仕をもって人に喜ばれなさい」――かつて大師父は仰せられた。そして少年が目覚めたとき、すべては始まる。シリーズ第4巻

カバーより

 時代は24世紀。前作の数年後。舞台は軌道娼界《ハニカム》だ。今回のテーマは性愛と倫理。機械じかけというタイトルから推測のとおり、アンドロイドの「恋人プロスティテュート」の物語だ。


 自分が何者かもわからない状態で目を覚ました少年キリアンは、少女アウローラの歓待を受ける。彼は実は救世群ラクティスで、冥王斑のキャリアだった。記憶が毎回失われている彼を満足させようと、アウローラはさまざまなシチュエーションでセックスを試みる。けれども旺盛な彼は満足しない。


 キリアンがいたのは軌道娼界《ハニカム》だった。アンドロイドたちの発想はずれていて、人間の尊厳を踏みにじっても気付かない。彼はこれに憤る。だがアウローラに説得され、《恋人たち》を創り出した大師父の提唱した理想的性交『混爾マージ』を体験しようと邁進する。


 けれども《ハニカム》は『惑星伝統の管理者』の倫理兵器から攻撃を受けていた。《恋人たち》の一派聖少女警察ヴァージン・ポリスは暴走し、乙女の姿をした純潔チェイスと老爺の姿をした遵法ロウフルが、アンドロイドたちに襲いかかる。


 あちこちでエロいと話題の第4巻だ。あまりのエロさに、続く第5巻発売時の出版社からの紹介が「今回はエロくない」だったほど。ただ、これがどこに向かうのかと思っていたら、ラストで「《恋人たち》は誤解している」と、思いっきり否定されていた。たしかに、大師父として彼らがあがめている人物が、誰にも愛されず誰も愛せなかった人生だったという時点で、勘違いとしか言いようがない。


 ラゴス誕生の秘話が興味深い。