『スターフォース』

あらすじ

二人の子供との平穏な暮らしは、ある夜、突如として終わりを告げた。家を襲った謎の宇宙船に子供たちは拉致され、大学でコンピュータ・サイエンスを教えるかいる自身も捕らわれの身となったのだ! だが、船内でいくつもの試練を乗り越えたすえ、宇宙船のAIから自分がこの船の指揮官になったと告げられる。困惑しながらも状況を調べるうち、驚くべき事実が……全人類の命運を握ることになった一人の男の驚異の冒険!

カバーより

 ミリタリーSFはあまり好きではないのだけれど、著者紹介に、世界各国で刊行されキンドル・ストアでも高い評価を得ていると書かれていたので買ってみた。が、読んでみてがっかり。なんとも薄っぺらい。


 主人公のカイルはある日宇宙船から延びた触手に捕らえられ、宇宙船に連れ込まれていくつかのテストを課せられる。どうやらテストに合格しないと殺されるようだ。合格しなかった彼の息子は、落下させられ殺された。何とか合格して生き延びた彼は、AIが制御する無人の宇宙船から降りられないまま、この宇宙船の指揮要員にされてしまった。


 こうした宇宙船は各地にたくさん現われていて、人びとをさらっては指揮要員を確保していた。何日かたつうちに、宇宙船に捕らわれた指揮要員たちは必要な物資を地上から略奪しはじめ、また、船団ができつつあった。


 ところが、これらの宇宙船とは異なる、さらに巨大で強力な宇宙船 マクロ機が現われて、地球を攻撃しはじめた。カイルたちの船団は何とかこれを撃退するも、人類はかなり劣勢で、地球は滅ぼされかけていた。


 スピード感はあるものの、悲劇的な状況とは裏腹に、あまりにも都合の良すぎる展開に興醒めする。たいして戦闘の経験も無いカイルが、船団を率いて地球防衛の第一線に立つというのもちょっと無理があるように感じるし、何より女性の扱いが救いがたい。何の役にも立たない若くて美しいだけの女性が主人公の宇宙船に乗りこみ、触手で縛り付けられて目を楽しませたあげく、その後カイルに言い寄って来る。カイルは子供を殺されて間もないのに、「これからの2年間は素晴らしいものになるだろう」などと呑気に喜んでいる。なんともベタな展開だ。そもそも宇宙船に連れ去られて一時は殺された女性が、自由を取り戻しても家にも帰らず、乗り合わせた男性と恋に落ちる、なんてことはあり得ないだろう。


 とはいえ、すでに映画化なども決まっているそうだし、活字で読むより、映像で観る方が面白いかもしれない。