『女悪魔の任務』
ザンスシリーズ第19巻目。このシリーズは最初から順番に読んでいたのだけれど、途中からどこまで買っていてどこまで読んだのかがわからなくなったため、新しく出版されたものについては買って読むようにした。だからシリーズの中程を読みそこねている。
今回の主人公は、女悪魔のメトリア。適切な語彙をうまく使えないという欠点を持つ。メトリアは、結婚して魂を半分得たことで、魂を持たない悪しき半身メンティアがそれを嫌がって、本体から分離してしまった。メンティアは普段は調子が狂った女悪魔だが、狂気地帯では極めてまともになる。前作の『ガーゴイルの誓い』にもこのメンティアが登場し、一行とともに活躍した。また、メトリアには小さな女の子のウオゥ・ビタイドという人格もある。この人格は15作目の『ゴブリン娘と魔法の杖』に登場していたようだ。私はまだそれを読んでいないので、いきさつはわからない。女悪魔はこれら3人の人格がくるくると交代しては現れて、さまざまな状況にそれぞれが適切に対処している。
結婚して幸せなメトリアだが、熱烈に合図を送っているにも拘らず、コウノトリがメッセージを受けそこねている。そこでお定まりのハンフリーの城で3つの関門を突破し助言を求める。メトリアに課せられたのは、シムルグが告発した裁判の関係者を召還するというもの。しかも総勢30人。このシリーズに登場した多くのキャラクター達が総出で登場する。
この裁判の被告となっているのは、ロク鳥のロクサーヌ。彼女はシムルグの卵を数百年の間温めていて、名無き城から出たこともない。はたしてどういう理由で裁判にかけられるのか。
女悪魔は瞬間移動でザンスを飛び回っては、関係者達を召還して連れて行く。中にははるばるマンダニアから呼んで来なければならない人々もいる。シリーズに登場した人々の後日譚をフォローしたり、登場人物達のそれぞれの悩みを解決したり、メトリアの過去が明らかになったりしながら、ザンスシリーズらしい壮大な危機の解決へと物語は膨らんでゆく。
ドラマにしろ小説にしろ、アメリカ人は裁判ものが好きな印象がある。ザンスシリーズのようなファンタジーでもそれをやってみた、そんな作品だ。