『人間の手がまだ触れない』

あらすじ

このままではふたりとも餓死してしまう! 手違いのため食料を積み忘れた宇宙艇乗組員は、前方に現れた人跡未踏の惑星に着陸しようとするが!? ブラックなユーモアあふれる表題作、時空にできた割れ目に挟まってしまった男の奇妙な冒険を描く「時間に挟まれた男」、殺人が特定のルール下で合法化された社会を舞台にしたサスペンス「七番目の犠牲」ほか、奇想天外でウィットに富んだ13篇を収録する傑作集

カバーより

 タイトルも作家名もずいぶん有名な短篇集。その割にはどういう内容なのか、ぜんぜんイメージがなかった。店頭でパラパラと読んでみると、星新一氏のショートショートのような赴きがある。もちろん日本の作家の方が影響を受けているのだろうが。


 購入して読んでみたらけっこう私好みで、あっという間に読み終わってしまった。風刺がぴりっと効いているが、笑い飛ばしている感じで嫌味な印象がない。1950年代に書かれた作品なのに、古びた印象もない。どれも短く読みやすいし専門知識も必要無いので、SF入門にはぴったりだ。


 うちの甥っこは本好きの妹の影響もあって本好きに育っているが、私も絵本を送ったりして英才教育に努めている。いずれは彼をSF好きに仕立ててやろうと、実は密かに野望を抱いている(笑)。さすがにまだ早すぎるが、小学生半ば頃になったらさりげなく置いておくのにぴったりの本だ(笑)。


 収録作品には、エイリアンの視点から人間を描いた作品が3篇あった。このように、視点をひっくり返した書き方は私の好みだ。人間にとっては正義の行為であっても、異なる倫理観で照らしてみると、倫理観に欠けたおぞましい行為に映る。他者は異なるのだ。ひっくり返してみると、普段見えにくいものが見えて来る。