『危険のP』

  • 著者:スー・グラフトン
  • 訳者:嵯峨静江
  • 早川書房
  • ISBN:415208362X
  • お気に入り度:★★★☆☆
  • あらすじ

    老医師には、その夜まで特に変わったようすは見られなかった。だが、勤め先の老人ホームでいつものように職員たちに声を掛けたあと、駐車場から車を出して帰宅の途についたはずの彼は、そのまま煙のように消え失せたのだ。当初は警察も事件性は薄いと見ていたが、その後九週間を過ぎても、その消息はまったくつかめなかった…

    失踪したダウ・パーセル医師の前妻フィオナの依頼で、マスコミを騒がせたこの失踪事件を調査することとなったキンジーだったが、調査は遅々として進まない。老医師の家族関係は二度の結婚で複雑に入り組んでいたうえ、勤め先の老人ホームには医療詐欺の疑いがかかっている。六十九歳のダウを失踪に走らせたのは、どちらの理由なのか?そもそも、彼は自らの意思で失踪したのだろうか?粘り強い調査を続けるキンジーは、やがてある発見をするが…

    ファンの熱い指示を受け、好調にミステリ界のトップを走り続ける人気シリーズ。人生と社会の闇に挑む、最新作。

    カバーより

 女性作家が書く、女性探偵の活躍するハードボイルドの草分けとなった、キンジー・ミルホーンシリーズの第16冊目。「アリバイのA」に始まってA〜Pまで続いてきた。


 9カ月前に行方不明になったダウワン医師の行方を捜してくれと、キンジーは医師の別れた妻フィオナから依頼される。医師が経営面で責任を持っていた診療所では不正が働かれており、度重なる書類の査察が行われていたことが判明。現在の妻クリスタルや、不動産を所有している共同経営的な立場になっている他の2人からも話を聞き、診療所で聞き込みをする。


 一方、事務所の移転先を探していたキンジーは、理想的な物件を見つけて契約する。家主の弟に気に入られ迫られるキンジー。しかし実際はとんでもない物件である事が判明し、彼女はトラブルに巻き込まれてしまう。


 相変わらずインデックスカードで情報を整理し*1、こっそり家宅侵入する。そして抜群の観察眼で医師の行方を探し出す。依頼された仕事はそこまでだけれど、彼女は自分の好奇心を満たすためにさらに探りを入れる。不正を暴き、殺害の証拠を見つけだす推理力は抜群である。珍しく(というかたぶん初めて)「以上報告します。キンジー・ミルホーン」というくくりの決まり文句がなかった。

*1:このシリーズは1980年代あたりで時代が止まっていることになっている