SFはひっくり返る

 ライトノベル系のSF作家の上遠野浩平氏が「波状言論」( http://www.hirokiazuma.com )というメールマガジンのインタビューの中でSFの定義についてこんなことを語ってらっしゃいました。

世界でも、認識でも「何でもひっくり返せる」というのが、私のSF観にはあるんですよ。ひっくり返す行為がない場合は、たとえどんな道具を使っていても、それは「その道具について書いた小説」にすぎない波状言論9号より

 この意見は私にはとても共感できる上、よく言われる「センス・オブ・ワンダー」云々という説明よりもずっと分かりやすくて良いですね。


 未来とか宇宙空間とかタイムトラベルとか、SF的とされる小道具は色々ありますが、それが登場していればSFかというとそうではない。「未来について書いたもの」だったり「宇宙を舞台に書いたもの」だったりするわけです。


 そもそも私がSFを好んで読み始めたのは、アイザック・アシモフ作の『鋼鉄都市』からでした。それ以前は推理小説を読んでいましたが、これもラストに「どんでん返し」のあるものが好きでした。『鋼鉄都市』は殺人事件を扱ったSFで、SFとしても推理小説としても良く出来た、見事にひっくり返る小説で、私のベストSFのうちの一つです。


 他にも「ひっくり返す」のが巧みな作家としては、ロバート・J・ソウヤーテッド・チャンなどが優秀だと思います。いずれも私の好きな作家です。逆にマイクル・クライトンなどは映画の原作などもたくさん書いていて小説も売れているようですが、私にとっては「道具について書いた小説」でしかなくて、読みたいという気がおこりません。もっとも『ジュラシック・パーク』しか読んでいないので、他にもっとSFを感じさせる作品もあるのかもしれませんが。


 実は私はあまり日本の作家の書くSFを読まないので上遠野浩平氏の作品はまだ読んでいないのですが、インタビューを見て読んでみようかと思いました。