『ダーク』シーズン3

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タイムトラベルを扱ったNETFLIXオリジナルSFドラマ「ダーク」。シーズン3はさらに複雑化し、3つの世界と3つの分岐にまで発展した。

過去が未来に、未来が過去に影響を及ぼし、もつれにもつれた因果関係。家系図はループし、4つの家系は緊密に結びついてゆく。

シナリオやプロットはもちろんのこと、手紙やネックレスといった小道具の使い方が、実に良くできている。最初は伏線とは全く気付かないほどさりげないのに、あとあと観直すと重要な伏線だったことがわかって驚嘆する。また、これだけ複雑な物語を、最後の数話でよくもパタパタと畳み込めたものだと感心する。しかもとても美しい。

複雑だった人間関係は、シーズン3ではさらに重層的になった。何しろ世界が増えたため、登場人物が倍になり、さらにそれが分岐するのだ。マルタだけでも何人も登場する。最初は見分けがつかず混乱した。頬に傷のあるマルタ、斜めに大きく傷のあるマルタなど、一応見かけは異なっているのだが、どちら側の世界にいるかによって傷の位置が左右反対になるため、最初はこんがらがった。

まずはこれまでのおさらいから。

シーズン1・2のあらすじ

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16歳の少年ヨナスは、幼なじみの少女マルタたちと洞窟へ行き、マルタの弟ミッケルが行方不明に。それ以前にもヴィンデンでは、少年が行方不明となる事件が起きていた。

やがてヨナスは謎の人物から、半年前に自殺したヨナスの父ミハエルの遺書の入った荷物を受け取った。その遺書には、行方不明となったミッケルが1986年へと時間を遡り、ヨナスの父ミハエルとなっていたことが書かれていた。洞窟へ潜り1986年でミッケルを見つけるヨナス。

ミッケルの父ウルリッヒも、息子を探して洞窟へ潜り、過去へ遡った。そこで1986年に行方不明となった弟マッツの犯人を突き止め、少年たちが殺されないよう先手を打つ。

ヨナスはミッケルを元の時間に取り戻そうとしたものの、未来や過去へ旅する羽目に。そして、1921年で秘密結社のような組織「旅人シーク・ムンドゥス」を率いる老人アダムや、暗躍する牧師ノアと出会う。

彼らの所持するポータルでミハエルの自殺する1日前に送り出されたヨナスは、父の自殺を止めようとするが、うまくいかなかった。原子力発電所の元所長だった老女クラウディアに連れられて姿を消す。

ヨナスに荷物を送った人物は、洞窟の時空の裂け目を閉じてループを終わらせようとしたが、思う結果とならなかった。彼はヨナスの母ハンナに素性を明かし、アダムが最終周期を始めるのを阻止しようとする。

だが、タイムトラベルのことは、警察署長のシャルロッテや、ミッケルの母カタリーナなど、多くの関係者が知るところとなった。一方、原子力発電所で秘密裏に処理された事故の残物により、まもなく終末が訪れようとしていた。

そんな中、老女クラウディアにこれから何が起きるのかを1年間仕込まれたヨナスが、2020年に戻り、マルタを終末から救おうとする。しかし、これもうまくいかなかった。ショックを受けるヨナスの前に現れたのは、異世界から来たマルタだった。終末の爆風が押し寄せる。

シーズン3

異世界へ行くヨナス

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シーズン2のラストで異世界のマルタに助けられたヨナスは、彼女の世界へ連れて来られた。しかし彼女は十分な説明もなく消えてしまった。

その世界はヨナスのいた世界と非常に似ていた。シーズン1と似ているけど少し違う、デジャヴのような光景が繰り広げられる。

悪夢から飛び起きベッドに座り、黄色いレインコートで学校へ行くマルタ。朝から浮気してまったく同じ言い訳をするウルリッヒ。その彼のトレーナーから長い髪を見つけ匂いを嗅ぐハンナ。逢引して2階から壁を伝って降りてゆくフランツィスカ。

ヨナスは学校へ行くが、この世界では誰も彼を知らなかった。今日が2019年11月4日のミッケルが行方不明となった日だと知ったヨナスは、これを阻止しようとする。しかし、ミッケルは洞窟へ行かず過去へも遡らなかった。

困惑するヨナスの前に老女エヴァが現れた。彼女はこの世界ではミッケルは過去に行かないため、ヨナスも生まれていないと告げた。しかしこの世界へも終末があと数日で訪れようとしていた。

エヴァに説得され、ヨナスはまだ何も知らないマルタを2052年に連れて行く。砂漠化したヴィンデンで、中年となったマルタに出迎えられた。ヨナスとマルタは二人で終末の阻止に向かうが、エヴァと中年マルタの目的は、異なるところにあった。

ヨナスの世界の人々

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一方、ヨナスの世界で終末を生き延びることができた他の人々のその後も次第にわかってくる。

洞窟で時空の裂け目を閉じた謎の人物は、中年となったヨナスだった。彼はカタリーナが置いて行ったタイムマシンで、マグヌスやバルトシュたちを終末間際に助け出した。しかし、出現したのは1888年で、タイムマシンの核燃料が無くなり、この時代からどこへも行けなくなっていた。

彼らはタンハウス機械工場でタイムマシンを再現しようと実験を繰り返していた。そこに現れたのが、ヨナスを終末から救い異世界へ連れて行って消えた、頬に傷のあるマルタだった。しかし、中年ヨナスには異世界のマルタに助けられた記憶はなかった。アダムの差し金かと疑うヨナス。

ハンナとカタリーナは、終末前にそれぞれ過去へ遡っていた。

ハンナは中年ヨナスのタイムマシンを持ち出して1954年に行き、ウルリッヒに復讐を果たした。その後もここに留まって、愛人として囲われていた。聖クリストファーのネックレスをプレゼントされる。
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カタリーナは終末間際に洞窟のトンネルを抜けて1987年に行った。彼女のその後は衝撃的だった。ミッケルは見つからず、やがて彼女は老人となったウルリッヒと再会。彼を精神病棟から救い出そうとする。しかし彼女の計画は悲劇を招いた。聖クリストファーのネックレスが湖の岸辺に落ちていた経緯が怖すぎる。

ペーターとエリザベート、中年クラウディアとレジーナは、貯蔵室に避難して終末を生き延びた。だが廃墟となったヴィンデンは危険な無法地帯となっていた。

ペーターたちはベニのトレーラーハウスを拠点に家族の行方を探すが、悲惨な運命が彼らを待ち受けていた。青年ノアがエリザベートを守るために現れる。

クラウディアは廃墟となった警察署に闘病中のレジーナを寝かし、貯蔵室で神の粒子について研究を進めていた。ある日異世界のクラウディアが接触して来て、ヨナスを信用せず、エヴァの陣営につくよう唆す。タイムトラベルをめぐり、アダムとエヴァが対立して覇権を争っていた。

異世界の終末

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異世界で終末を阻止しようと原発へ向かったヨナスは、マルタの頬にできた傷を見て、エヴァの言動に疑問を抱いた。マルタと共にエヴァの元へ向かい、元の世界へ戻すよう要求する。しかし、エヴァの目的は既に果たされていた。

ここで起きたことにショックを受けたマルタは、自分で終末を阻止しようと奮闘する。だが、アダムの送り込んだ使者に説得され、彼らと共に姿を消してしまう。しかし、エヴァも終末へ向けて戦士を送り出していた。激化するアダムとエヴァの覇権争い。そしてエヴァの世界にも終末が訪れる。

分岐する世界

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ところが、物語はシーズン2のラストで分岐、もしくは2番目の周期へと移行して、ますます複雑になってゆく。シュレディンガーの猫の思考実験で、猫が死んでいる状態と死んでいない状態が重ね合わされているのと同様のことがマクロの世界でも起き、二つの異なる状態に分岐したまま進行する。しかも分岐したままクロスし、互いに影響を与え合う。

発生した分岐では、終末間際のヨナスは異世界のマルタに助けられなかった。ヨナスの家の外で、異世界のマルタを異世界のバルトシュが引き止める。ヨナスは異世界のことは何も知らないまま、地下室で爆風をやり過ごす。

そしてこの分岐の未来もまた、すでに過去に遡って影響を与えていたのだった。終末を生き延びたヨナスはクラウディアと再会し、ポータルを稼働させようと試みる。

さらに第3の分岐も展開される。アダムの前に死んだはずの老女クラウディアが現れ、第3の世界の存在を告げる。説得されたアダムは、これもまた終末直前のヨナスの前に現れ、彼を連れて脱出する。

こんなに複雑になってしまい、あと1話しかないのにどうなることかと心配したが、2つの世界の覇権争いは、たいへん美しい終わり方となった。「What A Wonderful World」のBGMが素晴らしい。

だが、ラストはラストでとても多くのことを示唆する内容だった。起源の世界で開かれたただのレジーナのバースデーパーティーなのだが、参加しているメンバーの取り合わせや家族写真が意表をついていて驚かされた。とはいえ、これまで反目しあっていた3人の女性たちが、この世界では仲良く幸せそうで、良い結末だった。ウェラーの目の謎はついに明かされずじまいだった。

予定

いろいろと忙しくてまだまとめ中ですが、できれば次回、年表が書ければと考えています。