Netflixオリジナルドラマ『ダーク』
はてなブログ
Netflixのドラマで面白いSFがあったので、紹介しようと感想を書きましたが、もうすぐはてなダイアリーが終了するということなので、需要があるかどうかはさておき、はてなブログへ移行を考えています。・・・が、そのまま移行したのではレイアウトが崩れるので、しばらく時間がかかりそう。とりいそぎ、はてなダイアリーの方へ感想だけ掲載しておきます。
『ダーク』
ドイツで制作されたNetflixオリジナルドラマ。複雑なストーリー構成の作品で、過去と未来を縦断して伏線が張り巡らされていて面白い。重厚感のある映像や音楽も魅力。
舞台は、広大な森に囲まれた小さな町ヴィンデン。町には原子力発電所があるが、脱原発政策により2020年の停止が決定している。この町で少年が行方不明となって2週間、警官のウルリッヒたちは捜索を続けていた。ヴィンデンは犯罪の少ない町ではあったが、ウルリッヒの弟マッツも33年前に同様に忽然と姿を消し、以来行方不明となっていた。
高校生のヨナスは父の自殺でPTSDを患い、治療のため休んでいたが、新学期が始まり登校。友人バルトシュの提案で、夜遅く森の洞窟へと出かけた。すると洞窟の手前で異様な音と光の点滅が。怯えて逃げ出したヨナスたち。気がついた時には6人の子供たちのうちの1人がはぐれ、そのまま姿を消してしまった。
夜が明けて大規模な捜索が行われる。すると森で1人の少年の遺体が発見された。その遺体は、目の周りが焼け焦げ、鼓膜が破れていた。
当初ミステリーかと思って観ていたら、実はタイムトリップを扱ったSFだった。事件が起きるのも少し未来の2019年だ。
登場人物が多く、過去のエピソードなども紹介されるので、子供時代と大人になってからの人物像を同期させながら観る必要がある。登場人物のそれぞれの時代の写真も折りに触れ紹介されるのだが、一度観ただけではなかなか把握しきれない。
物語は主に4つの家系の人々によって展開する。彼らの行動は、時代を超えて複雑に絡みあっている。ストーリーが進むに連れて、各家系の家族構成を整理しないとわからなくなってきた。最初は人物の見分けもつきにくかった。字幕では苗字まで紹介されず、家族写真のみで家族とわかるものもあり、把握するのはけっこう大変だ。
以下が整理したその家族構成。続柄は、各家系の1行目に挙げた人物から見た続柄。
カーンヴァルト家
ニールセン家
- ウルリッヒ・ニールセン…警官。ヨナスの母ハンナと浮気中。
- 妻:カタリーナ・ニールセン…ヨナスの学校の校長。
- 長女:マルタ・ニールセン…高校生。ヨナスと1年前に付き合っていた。現在はバルトシュの彼女。二人の間で揺れ動く。
- 長男:マグヌス・ニールセン…高校生。マルタの弟。
- 次男:ミッケル・ニールセン…奇術師フーディーニに憧れる11歳。
- 父:トロンテ・ニールセン…元記者。
- 母:ヤーナ・ニールセン
- 弟:マッツ・ニールセン…1986年に行方不明に。当時12歳。
- 祖母(トロンテの母):アグネス・ニールセン…夫を亡くし、1953年にトロンテを連れてヴィンデンに移住。
ドップラー家
- シャルロッテ・ドップラー…警察署長。一連の事件の捜査を指揮。
- 夫:ペーター・ドップラー…診療所勤務(経営?)。ヨナスの主治医。1年前にゲイが発覚し、シャルロッテとは家庭内別居状態。
- 長女:フランツィスカ・ドップラー…高校生。ヨナスの同級生。
- 次女:エリザベート・ドップラー…耳が不自由。
- 義父(ペーターの父):ヘルゲ・ドップラー…かつて原子力発電所で働いていた。認知症で介護ホームに入所している。左耳が潰れている。
- 義祖父(ヘルゲの父):ベルント・ドップラー…元原子力発電所所長。足が不自由。
- 義祖母(ヘルゲの母):グレタ・ドップラー…浮気を告解。
- 祖父*1:H・G・タンハウス…時計屋。『時間の旅』を執筆。
ティーデマン家
その他
- 謎のフードの男:アタッシュケースを持ち、レジーナのホテルに宿泊。ヨナスに荷物を届けさせる。
- ノア神父:シャルロッテの次女エリザベートに時計を渡す。背中に刺青がある。
- エリック・オベンドルフ:2019年の最初の行方不明者。
- ウェラー:警官。シャルロッテの部下。眼帯をしている。
洞窟での失踪事件の後、ヨナスは謎のフードの男に話しかけられる。彼はヨナスの父親が命の恩人だと語った。彼から届いた荷物により、父ミハエルの秘密を知ったヨナスは衝撃を受け、真実を確かめるために洞窟の奥深くへと向かう。
一方、ウルリッヒは洞窟の中に原子力発電所のドアがあることに気づき、行方不明になった息子が発電所の敷地に入ったのではないかと疑う。また、マッツの事件との関連を見い出し、1986年当時の捜査記録を調べ直す。発電所で働いていたヘルゲの当時の行動に疑問を持ち、介護ホームで詰め寄った。誰かを阻止しようと徘徊するヘルゲを追いかけるが、見失い、洞窟をさまよう。真実へとたどり着くものの、ヨナスとは異なる道へと迷い込んでしまった。
一方で警察署長のシャルロッテは、事件の前後に鳥が墜落して大量に死んでいたことから、1986年の事件との関連を直感する。マッツが行方不明となった前後にも、やはり鳥が死んでいて、少女だったシャルロッテはそれをスケッチしていた。ウルリッヒからの報告や、夫のペーター、その父親のヘルゲの言動をもとに推理を進め、ヘルゲの小屋近くの地下室を訪れる。
物語は2019年だけでなく、1986年へ、さらに1953年へと広がってゆく。それぞれの時代のエピソードが進行するにつれ、謎が少しずつ解けていくが、それらは互いに干渉し合いながらループしている。
全体を通した雰囲気は、音楽が渋いし、美術の趣味がクラシカルで良い。レジーナのホテルの内装や調度品は、正統的で格調の高さを感じさせるし、ヨナスの家の壁紙などもかわいい。タンハウスの時計店や彼の製作する機械も雰囲気がある。
一方で人間関係はかなりどろどろしている。特にウルリッヒのダメっぶりが際立つ。ハンナもやりすぎとは思うが、女性目線からするとウルリッヒがダメすぎる。そんななか、ピュアなヨナスが清涼感を与えている。
まだまだ謎も多い。ざっと挙げてみる。
- なぜヨナスの父ミッケルは自殺したのか。
- 突如現れたアレクサンダーは何者なのか。
- 5歳のヘルゲは、この後どうなるのか。
- マッツはどうなるのか。
- ノアは何者で何を企んでいるのか。
- ウルリッヒの祖父は誰か。
- ペーターはヘルゲと血の繋がりはあるのか。母親は誰なのか。
- 思わせぶりな、ウェラーの眼帯やフランツィスカの鳥のネックレスには、何か意味があるのか。後で拾われる伏線なのか。
最終話となる第10話は見応えがあった。演出も、重厚感があってドラマチック。アメリカドラマのような派手さではないが、その分シナリオの秀逸さが際立つ。第1話の謎が解けつつも、シーズン2に向けた期待と謎がふくらむ内容だった。ラストは、これまでとはがらりと異なる、新しい局面の始まりを感じさせる。シーズン2の製作はすでに決定しているそうなので、完成が待ち遠しい。