天冥の標 最終巻

あらすじ

メニー・メニー・シープという人類の箱舟を舞台にした、《救世軍》たちとアウレーリア一統の末裔、そして機械じかけの子息たちの物語は、ここに大団円を迎える。羊と猿と百掬の銀河の彼方より伝わる因縁、人類史上最悪の宿怨を乗り越え、かろうじて新世界ハーブCより再興した地で、絶望的なジャイアント・アークの下、ヒトであるヒトとないヒトとともに私たちは願う、青葉よ、豊かなれと。天冥の標10巻・17冊、ついに完結

カバーより

 ついに『天冥の標』シリーズの最終巻が発売されたので(といっても2月発売なのですでにだいぶ経ちましたが)、全巻揃えて読み進めています。数年前に7巻までは読んでいたのですが、それ以降、どこまで購入してどこまで読んだかがあやふやになり、積ん読状態となっていました。

 内容の記憶もだいぶあやふやになっていたので、改めて6巻Part1から読み直しです。6巻3冊と7巻1冊を読み終えて、ようやく復習が完了、未読の部分を読み進めています。

 思えば10年前、2009年9月に発売された1巻は、「どうなるアクリラ⁉︎ どうなるカドム!?」というところで終わっていました。2巻で物語はそこから800年近くさかのぼり、7巻まできて、謎の植民星ハーブCがどこなのか、ようやく見えてきました。読んでいてなかなか辛いものがあった7巻でした。人類はどうなってしまうのでしょうか。

 現在8巻を読み進めていますが、この巻は、1巻の物語をイサリの視点から描いたもののようです。ハーブCの真実の姿を踏まえた上で、もう一度1巻2冊を読み直す必要がありそうです。

 うっかり先走って最後の方を読んでしまわないようにしています。でも、最終巻のあとがきは読んでしまいました。これだけの大作ともなると、完結したことが読者にとってもたいへん感慨深いです。10巻と言いつつ、実際には17冊、執筆期間も10年という、質量ともに大作となりましたが、しっかり完結までこぎつけていただいて感謝しています。おつかれさまでした。

 最終巻は、あらすじを読んでもまだこれまでのタイトルの羅列のようで、何のことだかわからないですね。最後まで読み終わるのはもう少し先になりそうですが、楽しみに読み進めたいと思います。

【honto】早川書房 国内SFフェア(電子書籍)

ハイブリッド型総合書店「honto」で、早川書房の国内SF電子書籍が30%オフで買えるフェアが始まりました。
本日4月18日から4月30日までです。
対象商品が427冊もあるから、気になる作品はこの機会に購入しておきたいです。

honto.jp

私自身はつい先日紙の書籍で揃えちゃいましたが、ついに完結した『天冥の標』全17巻など、まとめ買いするにはうってつけです!
『マルドゥック』シリーズも気になるところ。
重くて買いそびれていた『零號琴』は今回購入すると思います。

「honto」では、しばしば電子書籍20%オフを開催していますが、早川書房の対象商品30%オフはなかなかありません。
昨年9月の早川書房の対象商品50%オフ以来です。
そのときに買いまくったものがまだ読み終わらずに積読状態ではありますが、こうしたフェアをたまに実施してもらえるとありがたいです。

『移動都市/モータルエンジン』

『移動都市』の映画版

 映画『移動都市/モータル・エンジン』を観てきました。原作はフィリップ・リーヴ作の『移動都市』。製作と脚本が『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソンだけあって、特撮CGや、都市・街並み・乗り物などのデザイン、風景、美術といった世界観の作り込みがめちゃくちゃ良くできていました。原作の雰囲気を見事に表現しつつ、リアリティを持たせた重厚感のある作りになっています。メカ好きには必見です。

無理筋ながら魅力的な世界観

 『移動都市』というタイトルの通り、この世界では都市そのものが、そこに住む人々を乗せたまま疾走します。都市が生き物のように獲物を求めてうろつきまわり、他の弱い都市をむさぼり食うという弱肉強食の世界設定で、都市淘汰主義ダーウィニズムと呼ばれています。といっても、本当に食べるわけではなく、実際には略奪です。原作では、およそ1000年前に起きた六十分戦争で地殻が大きく変動し、当時は地震や噴火がしょっちゅうあったため、都市は移動を始めたということになっています。

 設定自体にはかなり無理がありますが、それはさておき、この世界観は非常に魅力的です。メカメカしい都市や飛行船など、メカ好きにはおそらくたまりません。メカ好きのうちの旦那は原作も知らないのに夢中になっておりました。私自身はメカにそこまで思い入れはないのですが、それでも登場する都市や乗り物などのデザインはすばらしく、非常に魅力的で良い出来栄えです。

 特に移動都市ロンドンが岩塩採掘都市を狩るシーンは迫力満点。都市が都市を喰らう感じがよく表現できていました。また、ロンドンの街並みも魅力的。最上部にはセント・ポール大聖堂がそびえ、前方のキャタピラ上部にはトラファルガー広場のライオンが鎮座しています。遠目には『風の谷のナウシカ』に登場する王蟲のようです。他にも、空中都市エアヘイヴンの造形も魅力的だし、要塞都市バトモンフ・ゴンパ〈楯の壁〉をロンドンが攻撃するシーンも迫力がありました。

うまく整理し直されたストーリー

 主人公は、移動都市ロンドンに住む史学ギルド見習いのトム・ナッツワーシー。冒頭でロンドンは岩塩採掘都市を追いかけ回して捕獲します。この都市からロンドンに乗り移ってきた一人の女性が、トムのあこがれるキャサリンの父であり、尊敬するギルド長でもあるサディアス・ヴァレンタインに斬りかかります。とっさにヴァレンタインの命を救ったトムは、逃げる女性を捕まえようと追い詰めます。彼女は自分の頬にある大きな傷跡を見せ、ヴァレンタインがヘスター・ショウに何をしたか尋ねるようトムに告げて、ロンドンから脱出します。

 その後、トムもロンドンから外界へと振り落とされてしまう羽目に。ヘスターに助けられたトムは、しばらく彼女と同行します。ヘスターはトムに阻止されてしまった復讐を再び果たすために、ロンドンを追いかけていました。しかし過酷な外界で、二人は危険にさらされます。また、ヘスターを狙って〈復活者〉シュライクが追いかけてきます。〈復活者〉とは、戦場から回収した兵士の死体にオールドテクのマシンを神経系につないでよみがえらせた、何百年も前につくられた人造人間です。

 相次ぐ危機を回避し、最終的に窮状を助けてくれたのが高速飛行船乗りの女性アナ・ファン。赤いコートにサングラスという出で立ちで、赤い飛行船〈ジェニー・ハニヴァー〉号を操ります。彼女のアクションシーンもかっこいい。

 そして、物語はオールドテク〈メドゥーサ〉をめぐり、移動都市ロンドン VS 反移動都市同盟の戦いへと発展してゆきます。トムとヘスターは〈メドゥーサ〉を阻止すべく奮闘。

 原作を改めて読み直すと、映画より遥かに過酷な内容でした。原作では、ヴァレンタインの娘キャサリンとトムの友人べヴィスがもっとずっと活躍していて、ヘスターやトムの活躍は少々見劣りします。映画はそのあたりをトムとヘスターの活躍に変え、メドゥーサの阻止に一役買わせていました。シュライクの持ってたペンダントなんかも原作にはありません。また、ヴァレンタインももっと葛藤を抱えていて人間味がある人物として描かれていました。とはいえ、原作の良さを損なわずうまく整理されていたと思います。

 また、ヘスターのイメージは原作どおりで良かったと思います。トムは私の印象ではもっと若いイメージがありましたが、オールドテクマニアっぽさがよく表現されていました。

広告不足?

 製作にものすごくお金をかけたらしい素晴らしい出来栄えの映画でしたが、その分広告費には予算が振り分けられなかったのか、あまり話題にもならずに終わってしまった感じでした。3月は上映されている映画も多くて目立たなかったのかもしれません。続篇もさらに魅力的な都市が登場するので製作してほしいのですが、難しいかもしれないですね。

原作概要

あらすじ

60分戦争で文明が荒廃した遥かな未来。世界は都市間自然淘汰主義に則り、移動しながら狩ったり狩られたり、食ったり食われたりを繰り返す都市と、それに反撥する反移動都市同盟にわかれて争っていた。移動都市ロンドンに住むギルド見習いの孤児トムは、ギルド長の命を狙う謎の少女ヘスターを助けるが……。過酷な世界でたくましく生きるトムとヘスターの冒険。傑作シリーズ開幕。

カバーより