『男の勘ちがい』

 「男らしさ」にとらわれすぎてお疲れ気味の人に。男性ももう少し素直に生きたほうが生き易いだろうと思うのだが、植えつけられた「男らしさ」像に自分を当てはめるために、自分がどれだけ無理しているかさえ気がつかない人は案外多いように思える。
 私は多様性を礼賛したいと思っているので、男らしさ女らしさという固定観念に縛られた枠組みにこだわるより、男性にも女性にも選択肢がたくさんあることの方が好ましいと思う。

『日本人とアイデンティティ』

 エッセイ集。タイトルの割には、日本人のアイデンティティに関わる内容はあまり多くなかった。
 父親の役割は「区切ること」で、母親の役割は「包むこと」だという。日本人は個を区切ったり仕切ったりすることが欧米人よりあいまいなため、父親不在になりがちらしい。確かにそのように思える。厳しさが足りないというよりは、やはり「区切る」こと、自分の家とよその家のやり方の違いだとか、自分と他人との違いだとか、大人と子供の違いだとか、そういった境界をはっきりさせる力が足りないのだろう。
 漫画の『鋼の錬金術師』の人気が高いが、この漫画の良さはこの「区切る」ということがきちんと描かれているということだと思える。