『アイダ王女の小さな月』

あらすじ

サンダル木の精霊フォーンのフォレストは、ある日友人の木靴木のフォーンが失踪してしまったことを知る。守護精霊を失った木靴木は、このままではおぞましいマンダニアの木と同じになってしまう!木を助けるには、新たな守護精霊になるフォーンを見つけるしかない。よき魔法使いハンフリーの助言に従い、フォレストは夢馬のインブリとともに、アイダ王女の頭のまわりをまわる不思議な世界―プテロへと旅立つが…。

カバーより

 お馴染みザンスシリーズの第21作目。今回の主人公はフォーンのフォレスト。彼は木靴木の守護精霊となってくれるフォーンを探すために、良き魔法使いハンフリーの元を訪れた。アイダ王女の頭のまわりをまわる小さな月プテロへ行くよう指示されたフォレストは、これまでにも何度か登場した夢馬のインブリの案内で、魂だけの存在となってプテロへと向かう。魂が半分しかないインブリは、プテロでは馬の姿を保つことができず女性の姿をとっている。


 プテロには、ザンスの全てのアイディアが凝縮している。ここにはザンスにいる者が全員存在しているし、まだ存在が確定していない者まで存在している。プテロでは西へ向かうと年齢が若返り、東へ進むと年を寄る。フォレストとインブリはケンタウロスのキャスリンに助けられ、お返しに彼女の望みを叶える手助けをしながら旅を続ける。


 さらにこの旅は、入れ子状に続いていく。プテロにもアイダ王女がいて、彼女の顔のまわりには三角錐の月ピラミッドがまわっている。フォレストとインブリはアイダ王女の姪で双児のドーンとイーヴを連れ立って、このピラミッドへと向かうことに。さらにピラミッドにもアイダ王女がいて、その顔のまわりには円環体(ドーナツ型)の月トーラスがまわっている。そしてトーラスにもアイダ王女がいて、その顔のまわりには円錐状の月コーンがまわっていて…。


 毎度のことながら、だじゃれで発生する様々なトラブルに悩まされ、連鎖して続いていく問題をいくつも解決し、あちこちの男女の仲を取り持ちながら、一行は旅を続ける。ラストは、最初からそうなるだろうと予測した通りの結末だった。今回は危機もたいしたことないし、あまり印象にも残らないストーリーだった。


 今回は、まだ生まれていない者まで登場しているので、今まで以上にかつての登場人物達が再登場している気がする。今後の続篇で存在の確定していなかった子供達がザンスに生まれてきて、主人公として活躍するかもしれない。ちなみに、作者のサイトにはザンスシリーズの登場人物の一覧がある(http://www.hipiers.com/download.html)。このPDFが実に44ページ。もう多すぎて把握しきれない。