『スターシップ ―反乱―』

あらすじ

巡視艦〈セオドア・ルーズベルト〉に着任したウィルソン・コール中佐――過去に三度の勲章を授けられた有能な士官だが、ことなかれ主義を嫌い独断専行にはしるため、上層部の不興を買い、この銀河辺境宙域に、しかも総勢60名足らずの老朽艦に左遷されたのだ。だがこんなことで挫ける彼ではない。第2副長として最初の当直中に、敵対するテロニ連邦に加盟したばかりのボーテル2の航宙艦を発見するや、ただちに行動を起こすが!?

カバーより

 マイク・レズニックの作品は、『アイヴォリー ―ある象牙の物語―』、『パラダイス ―楽園と呼ばれた星―』、『キリンヤガ』と、どれも面白かった。それでこの『スターシップ ―反乱―』も買ってみたのだけれど、これは何となく古くさい印象があって今ひとつだった。


 有能で型破りなウィルソン・コールが、問題のある者ばかりを寄せ集めたセオドア・ルーズベルト艦に赴任し、やる気の無い官僚主義と対立しながらも大活躍するという内容だ。赴任早々一人で惑星に潜入し、敵宇宙人の陰謀を暴くコール。それに振り回された軍の上部からは不興を買ったものの、何度も勲章をもらうなどしているコールは大衆の人気も高いため、軍は彼の扱いに苦慮する。


 また、ルーズベルト艦では麻薬がはびこっていたが、取り締まる気のない事なかれ主義の艦長に代わってコールは断固として取り締まり、艦に規律を取り戻す。こうして、行く先々で官僚主義と衝突しては、周囲の人々を怒らせてしまい、政治的な手段で報復される。


 ただ、こういった官僚主義と有能な人物との対立という構図自体が、すでに変わって来ている気がする。官僚主義はまだ存在していても、その性質はもっと変化していて、こういうステレオタイプなものではなくなっているのかもしれない。また、スラップスティックなノリと、ルーズベルト艦のクルーとして乗り込んでいる宇宙人のイメージも、やはり古くさく感じられてしまう。


 最初読んだとき、文章の書き方から短篇集なのかと思ったら、そうではなく長篇だった。けれどもせっかくの個性的なキャラなので、短篇集として事件がいくつか起こり、それがまとまって一つの長篇となっている方が、この作品の内容には似合うような気がした。