『量子真空』

あらすじ

生物知性を見つけしだい破壊する謎の機会生命が人類を探知した!この怖るべき事態を知った連接脳派は、脱出用に最速の近高速宇宙船団を建造し、同時にかつて自らが開発し何者かに強奪された〈隠匿兵器〉の再入手を計画する。だが、連接脳派だけが生き残ることに反発したクラバインは、全人類のため、独力で〈隠匿兵器〉を再入手すべく、孔雀座デルタ星系へと向かうが……!? 絶賛を博した『啓示空間』の待望の続篇登場!

カバーより

 文庫本のくせに45mmと、相変わらず分厚い。新しい糊の技術のおかげでさらに分厚い製本が実現したらしいが、高くても良いから三冊くらいに分けてもらいたいものだ。


 今回は今まで紹介されて来たレヴェレーション宇宙史の作品から、主要なキャラが総動員された感じがある。『火星の長城』(感想はこちら)からは連接脳派のクラバイン、ガリアナ、フェルカ、ルモントワール達が、『啓示空間』(感想はこちら)からはアナ・クーリ、ウルトラ族のイリア・ボリョーワ、宇宙船に融合した船長達が登場する。その他にも、以前の作品に登場した面々が何人か登場している。


 こんなに分厚いけれども、ストーリー自体は割合単純。ガリアナの遠征により、恒星間飛行ができるほどに進化した生物知性を殺戮するインヒビターの存在が明らかになった。連接脳派達はこれをウルフと呼んで警戒する。これに対抗するために、連接脳派の秘密組織〈ナイトカウンシル〉は、かつて開発したけれどもあまりの強力さに封印していた〈隠匿兵器〉を手に入れようと試みる。この兵器はすでに何者かに奪われていたが、リサーガム星で使用されたことにより、所在が明らかになった。〈ナイトカウンシル〉に属するスケイドは、武器のあるリサーガム星へ向けて高速に近い速度で旅立つ。スケイドのやりかたに疑問を覚えたクラバインは、彼女より先に到着して自分自身が兵器を手に入れようと、後を追う。光速に近い速度で繰り広げられる熾烈な追跡劇が見もの。一方リサーガム星では、インヒビターが人類を標的に定め、恒星を改造する規模の強力な兵器を作りつつあった。連接脳派の〈隠匿兵器〉を手に入れていたイリア達は、リサーガム星の住人達を、何とか避難させようと計画を練る。


 今までのあらすじをもう一度おさらいしているために、やたらと話が長くなっている。もう少し短くても良かっただろうに、長いのがこの作家の売りになっているようなので、短くなることはないかもしれない。


 それにしても、この光速近い速度での追跡劇は、『銀河北極』(感想はこちら)でも登場した。追いかける理由や人物は異なっているけれど、どうもこの作家には似たようなエピソードを何度も繰り返す傾向があるようだ。その傾向がひどくならなければ良いのだけれども。