『掠奪都市の黄金』

 『移動都市』(感想はこちら)の続編。相変わらず宮崎アニメっぽい。今回の舞台は北方の移動都市アンカレジ。移動都市間の抗争は激しさを増していて、喰うか喰われるかの攻防が繰り広げられている。アンカレジも大型の移動都市に狙われている小さな都市の一つ。疫病で市民をたくさん失った。この都市を統治しているのは16歳の少女フレイア。アンカレジの今後の進路として、ある決断をくだす。そこにトムとヘスターが飛行船に乗ってやって来た。追われて被害を受けていた飛行船を修理する間、二人はアンカレジに留まることに。


 トムをめぐって、ヘスターとフレイアが火花を散らす、微妙な関係が面白い。それにしても、衝動的にあんな行動をとってしまったヘスターが、その秘密を抱えてどう生きていくんだろうと思っていたけれど、この結末は予想外だった。道義的にはヘスターは秘密を明かすべきなんだろうけれど、明かしてしまえばそこには居られないのではと思っていたが、別な道が選択される。純粋培養されたトムに比べると、少女達はずいぶん、したたかで現金だ。


 興味深かったのが、都市に寄生して略奪を働く子供達の集団。アンクル率いるこの集団は、メカニカルな道具を駆使して移動都市に潜入し、スパイ活動と略奪行為を行う。これがなかなか味がある。大きく塗り替えられようとしている都市間の勢力図に、今後大きな役割を占めていきそうだ。


 次巻でシリーズは結末を迎えるようだ。舞台はいよいよ、過去の遺物の眠るアメリカへ移ると思われる。また、後書きによると次巻は主人公が変わるらしい。おそらく代替わりして、やはり少年少女達が主人公として活躍するのだろう。果たしてアメリカはどうなっているのか。また、移動都市の未来はどうなるのか、楽しみだ。