『グリュフォンの卵』

 短篇集。どれも粒が揃っていてなかなか良く、期待の新人と注目されるのも納得できる。イーガンのテーマとも通じるものがあり、今時のSFらしいSFだ。固有名詞などの語感もいい。


 人間並の知能を持ち二足歩行するよう改変された、犬の詐欺師が主人公の「犬はワンワンと言った」が味があって好き。「ギヌンガガップ」は、コピーされた人間がオリジナルと同じか違うかを扱っていて興味深い。自分の信じる主体を否定された主人公のもらす「ああ、つらいわ」が共感できて妙に好き。ここにこの台詞をはさむセンスが好きだ。表題にもなった「グリュフォンの卵」もすばらしい。精神を自分自身でプログラミングできるとしたら、いかにプログラムするべきか。イーガンチックなテーマだ。