『ミカドの肖像』

あらすじ

 コクドはなぜ旧皇族の土地を次々と取得し、プリンスホテルを建てることができたのか。その謎と西武王国・堤家支配の仕組みを、〈ミカド〉の禁忌に触れまいとする日本の〈不可視のシステム〉の存在とともに、ひもといてゆく。
 また、欧米人から喝采を浴びるオペレッタ「ミカド」をめぐって、世界史のなかに天皇制がどのように位置づけられていったかを探る。さらに、なぜ明治天皇の「御真影」が西洋人の風貌になったのかを解き明かす。
 近代天皇制に織り込まれたさまざまな記号を、世界一周取材で丹念に読み解いた、渾身の力作。

カバーより

 本書もある意味同じ日本教について書かれているのだと私は思っています。山本七平氏が「虚エネルギー」と台風になぞらえて日本教のことを表現しているのに対し、猪瀬氏は「空虚な中心」という表現を引用しています。両者はイメージが妙に似ているので、この本に興味を持ちました。中心に静謐な去私の象徴の「ミカド」をすえ、周りから次々と大勢の人を巻き込みながら、日本人はどこへ向かうのでしょうか。ついでに言えば、これは「萌え」の構造とも同じなんだろうと私は思います。また、巫女ブーム?なども同じ構造なんだろうと思います。内容としては、皇居近辺のビルが100mにわずかに足りなくて、それ以上の高さのビルを造ろうとしたら、次から次へと反対する人が表れ、落としどころがその高さだったという取材がたいへんおもしろかったです。なぜ100m未満だったら良いだろうと考えられたのか、その根拠を知りたいものです。また、この本は広範囲な取材を元にして書かれていて、取材のおもしろさを堪能しました。