〈パーンの竜騎士〉シリーズ

 『パーンの竜騎士(8)―竜の挑戦』(上)を読み終わったのだが、いきなり(8)から紹介するのはあんまりな内容なのでまずはシリーズの紹介を。

 このシリーズは一応SF的な意味付けはされているけれども、シリーズ名に竜騎士とついていることからもわかるように、竜にまたがる騎士が中世のような世界で活躍するストーリーで、どちらかといえばファンタジーの範疇に入るかもしれない。独特の世界観が詩情にあふれていて魅力的で、世界観を楽しみたい人にお勧め。この作者の話はパートナーとの絆ということが大きなテーマとなっているものが多く、このシリーズも竜と竜騎士との固い絆がテーマとなっている。


 ルクバト星系の惑星パーンには、糸胞という何でも食い尽くしてしまう細菌の一種が、赤ノ星が近付く時期に定期的に降る。元々は地球から移住してきた人々が2500年に渡ってこの地で定住し、糸胞と戦ってきた。移住当時の知識は廃れてしまい、社会的には中世の時代となってしまっている。ただこの世界には騎士は居ても忠誠を誓う象徴となるべき王や姫などはおらず、戦う相手も意志を持たぬ胞子状の生物である。また竜騎士の住む大巖洞、一般市民の住む城塞、職能集団の住む各工舎がおのおの権力を分担して持ちあっている。


 パーンの竜は、元々は火蜥蜴と呼ばれる竜に似た土着の生き物を遺伝子組換えによって改造したもので、人間と一種のテレパシーで意思の疎通ができる。感合ノ儀によって卵の孵化した時に竜が自分のパートナーとなるべき人間を選び、その選ばれた人間が竜騎士となる。竜と竜騎士は深い結びつきを持ち、死ぬまで(もしくは死んでも)その絆が絶たれることはない。


 また、竜は空間を瞬時に移動する能力も持っている。どこかに移動するときにいは一旦間隙と呼ばれる何もない極寒の亜空間に入り、行きたい場所に出る。大変危険だが時を越えることもできる。


 竜の種類も色により様々な種類があり、その役割が決まっている。そういった細かな慣わしや儀式といったものがこのシリーズの魅力の一つとなっている。


 構成としては、ある一つの時代が取り上げられていて登場人物が時と共に歳を重ねながら移り変わっていく本編と、その他の時代で活躍し、伝説となっている外伝の2種類がある。科学的にはどうとか社会的にも無理だろうとか、そういった細かいヤボなことは言わずにストーリーや世界観にひたって楽しみなさいといった作品。