『ヴォル・ゲーム』

あらすじ

苦難のあげく士官学校を卒業し、初任務に胸高鳴らす新人少尉マイルズ。宇宙艦隊を希望していた彼を待っていた初の任官先とはなんと人里離れた孤島の気象観測基地!問題児の彼がこの退屈きわまりない任務を勤められれば宇宙船に乗せてやる、というのだが……当然ここでもマイルズは騒動の渦中に。ユーモアと冒険のヒューゴー賞受賞作。

目録より

 ヴォルコシガン・サガシリーズで、マイルズが20歳の時の話。「喪の山」のすぐ後にあたる。バラヤーの主要銀河ルートの一つヘーゲン・ハブで軍備増強の動きがある。ここを宿敵セタガンダに押さえられては困るバラヤーは、近隣で元デンダリィ傭兵艦隊が雇われているのを有利に活かそうとマイルズを送りこむ。武器商人に変装して接触を謀るマイルズだったがトラブルに巻き込まれ、収容された所で出会ったのは家出したバラヤーの若き皇帝グレゴールだった。


 ただでさえ不穏な状況下、下手に動くと星間戦争になりかねない。皇帝の継承権を持つマイルズは、グレゴールに万一のことがあれば政治的に落とし入れられる危険もある。デンダリィ隊も今では内部で反乱が起きていてあてにできない。上官とも連絡が取れず、マイルズは独断で突っ走る。


 本物の権力を生まれながらにして持ちながら、自分にそれだけの度量があるかと悩む皇帝。象徴としての地位を抜きにして、自分が果たしてどこまでやっていけるのかを試したいと願う。それと対照的に、権力を手にしたい者達は彼を自分の側につけようと画策する。権力と責任とは何なのかを考えさせられる。マイルズは友人として、臣民としてグレゴールを助け出すために策略を練る。


 今回はマイルズが新米の兵士として登場しているが、その器に収まりきれず上官を振りまわしてしまう。暇を持て余せば基地の機能を一発で止める個所を割り出してみたり、機密保安庁のファイルの保安上の穴を指摘したりする(覗いた後で)。でも結局は彼も、ヴォル(貴族)という親譲りの特権をひけらかして昇格するのでなく、自分自身の実力でヴォルとしての自分の地位を獲得するためにがんばっているのである。