『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』
- 著者:J・K・ローリング
- 訳者:松岡 佑子
- 出版:静山社
- ISBN:4915512401
- お気に入り度:★★★★☆
夏休みのある日、ハリーは13歳の誕生日を迎える。あいかわらずハリーを無視するダーズリー一家。さらに悪いことに、おじさんの妹、恐怖のマージおばさんが泊まりに来た。耐えかねて家出をするハリーに、恐ろしい事件がふりかかる。
脱獄不可能のアズカバンから脱走した囚人がハリーの命を狙っているという。
新任のルーピン先生を迎えたホグワーツ校でハリーは魔法使いとしても、人間としてもひとまわりたくましく成長する。
さて今回のヴォルデモートとの対決は?
イギリスで大人気となり、日本でもベストセラーとなったハリー・ポッターシリーズの第三巻(第一巻「ハリー・ポッターと賢者の石」、第二巻「ハリー・ポッターと秘密の部屋」)。一巻目の発売と同時に私は目をひかれて購入し、とても面白いと思っていたのだが、あっという間に大ブームとなってしまった。この手のものがベストセラーとなるたびに、「私の方が先に目をつけていたのに」と思ってしまう(笑)。
ヴォルデモートの手先だったシリウス・ブラックが、アズカバン要塞監獄から抜け出して、三年生となったハリーの命を狙っているという噂が流れていた。ホグワーツ校の安全のため、アズカバンの看守の
厳重な警戒が続く中、新学期は始まった。新任の「闇の魔術に対する防衛術」担当のルーピン先生を迎え、「魔法生物飼育学」「変身術」「占い学」「マグル学」「数占い学」など独特の授業が始まる。ハーマイオニーは異常な量の授業を選択していて、次第に勉強に追われていく。
ルーピン先生の秘密、ハーマイオニーの秘密、ブラックの秘密、休暇で訪れるホグズミード村の秘密。ハリーの両親が殺害されるにいたった様子が少しずつ明らかにされて行く。
それにしても、ハリーの親戚みんながこれほど性格が悪い中、よくハリーも両親も良い性格でいられたものだ。自分の守護霊を呼び出すために一番幸せだった思い出を強く思うよう言われるが、幸せな思い出のないハリーが不憫である。アイデンティティを失うことが死ぬことよりももっと酷いことだとし、それを跳ね返すために幸せな思い出が必要だとするあたりはさすが児童書の鑑だ。
少しSF的なところもある。クラークだったかが、「発達した科学は魔法と区別がつかない」と語っていたが、魔法をご都合主義にならないよう描こうとすると、SFに近づくのかもしれない。SFの賞であるヒューゴー賞で、この作品ではないがこのシリーズが、2001年に受賞している。