『ペルセウス座流星群』
- 著者:ロバート・チャールズ・ウィルスン
- 訳者:茂木健
- 出版:東京創元社
- ISBN:9784488706081
- お気に入り度:★★★☆☆
どちらかというとホラー寄りなSFの連作短篇集。サブタイトルに「ファインダーズ古書店より」とあり、トロントにある少し不思議なこの古書店を軸に、それぞれの短篇がつながっている。といっても、その古書店で物を買った程度のつながりしかない作品もあるという、ゆるいつながりだ。各作品の内容は、巻末の解説でとてもうまく紹介されている。
『時間封鎖』三部作(感想:『時間封鎖』、『無限記憶』、『連環宇宙』)など、ロバート・チャールズ・ウィルスンの作品はこれまで長篇しか読んでいなかったが、短篇もなかなかよくまとまっている。むしろこの作者はこういった短篇の方が向いていると思えるほどだ。
だが、長篇にしても短篇にしてもあまり明るい印象のものがない。閉塞的で、神経質そうで、切迫感がある。これは終末的な題材を扱っているせいかと思っていたが、本作ではそれがさらに強調されている気がする。おそらくこれがこの作者の持ち味なんだろう。とりわけ最初に収録されている「アブラハムの森」は、子供が主人公で心温まる幻想的な物語になるのかと思いきや、予想外に辛辣な方向へと展開していて驚いた。
また、実際には何が起こっているのかよくわからない話が多い。登場人物が思い込んでいるだけなのか、幻想なのか、実際に不思議なことが起こっているのか判別がつかない。なんだかよくわからないまま終わってしまい、説明すらない作品もいくつかある。こんな漠然とした題材で、よくこれだけ話をまとめられたものだ。もっとも、幻想怪奇小説としては、あまりに詳しく語られるてしまうと興ざめなのだろう。
しかもやたらと小難しい。「新しい宗教を発明する」というお題でコンテストして賭けに興じる人々や、新しい
SF的には、「無限による分割」がいきなり壮大な物語へと変化していて面白かった。こんな短篇にここまで詰め込めるのがすごい。円環チェスが興味深い「アブラハムの森」も好みだ。これを知って読むと、他の作品に出てくる店主への見方が変わってくる。はたしてこの古書店はいつの時代から続いているのだろうか。