『天冥の標III アウレーリア一統』

あらすじ

西暦2310年、小惑星帯を中心に太陽系内に広がった人類のなかでも、ノイジーラント大主教国は肉体改造により真空に適応した《酸素いらず》の国だった。海賊狩りの任にあたる強襲砲艦エスレルの艦長サー・アダムス・アウレーリアは、小惑星エウレカに暮らす救世群の人々と出会う。伝説の動力炉ドロテアに繋がる報告書を奪われたという彼らの依頼で、アダムスらは海賊の行方を追うことになるが……。シリーズ第3巻。

カバーより

 時代は24世紀。舞台を宇宙へとうつし、海賊退治のスペオペに。これが華麗でかっこいい。おそらく「宇宙軍カバラ」の物語。


 宗教国家のノイジーラント大主教国は、海賊退治で名を馳せている。同性婚や人体改造をいとわない彼らは、宇宙に適した身体に改造している。体内に電気をため二酸化炭素を分解できるというもので、少しの間なら酸素がなくても活動できるため、《酸素いらずアンチ・オックス》と呼ばれている。この特殊な身体機能を活かして独特の方法で強襲を仕掛け、コイルガンをぶっぱなす。


 海賊に襲われた救世群ラクティスの要請で、ノイジーラントのサー・アダムス・アウレーリア艦長は、彼らの住む小惑星エウレカを訪れた。奪われたのは、ドロテア調査書。かつて木星で見つかった巨大な古代遺跡ドロテア・ワットを調査した報告書だ。23世紀にこの遺跡は動かされ、行方不明となっていた。遺跡を調べていた調査隊が、行方不明となる直前に送ったのがこの報告書だ。


 アダムスは、華麗な強襲砲艦エスレルで海賊イシスの後を追う。これに乱入したのが、ドロテア調査書を取り戻そうとする救世群のグレア・アイザワと、救世群の暴走を心配するお目付役の医師団リエゾン・ドクター瀬秋樹野セアキ・ジュノ。海賊をやっつけたりやっつけられたりしながら、ドロテア・ワットをめぐって、海賊と救世群とノイジーラントで三つ巴の争奪戦が繰り広げられる。


 積年の恨みつらみを抱えたグレアの暴走っぷりがすさまじい。アダムス艦長は1巻登場のアクリラを彷彿させる、元気でナルシストの美少年。そのせいか、この巻はボーイズ・ラブ風味。