『愚か者死すべし』
- 著者:原尞
- 出版:早川書房
- ISBN:9784150309121
- お気に入り度:★★★☆☆
私立探偵沢崎を主人公とするハードボイルド。『そして夜は甦る』『私が殺した少女』『さらば長き眠り』の三作が第一期のシリーズで、本作は第二期新シリーズの一作目なのだそうだ。ハードカバーで出されていたものが単行本化されていたので購入。ブログを見返してみると、2005年に購入予定となっていた(感想はこちら)。
このシリーズはハードボイルドらしいストイックさが貫かれていて、安心して読める。これの前に読んだ鏡明氏作『不確定世界の探偵物語』(感想はこちら)が、ハードボイルドの体裁を取りつつも、主人公が肉感的な女にデレデレで、あげくに純愛に走ってしまい、とても違和感があった。色・金・権力に自制がないと、ハードボイルドらしくないと思う。その点本作はそれらに見事にストイックで、ハードボイルドのクールな世界観を満喫できる。
今回の事件では、暴力団の抗争と、政界の情勢を裏で左右する大物人物の誘拐事件が交錯する。色・金・権力の欲望が渦巻く中、沢崎はそこに絡み取られずに、裏の裏まで飄々と透かし見ていてかっこいい。