『ヴェイスの盲点』『フェイダーリンクの鯨』

あらすじ

社長のロイドに、女性パイロットのマージ、そして、かなりガタのきた恒星間宇宙船+シャトルアルフェッカ号―それが銀河の零細企業・ミリガン運送のすべてだった。愛機の修理費を稼ぐため、惑星ヴェイスへと向かったロイドとマージ。だが、その軌道は『大戦』の負の遺産である機雷原に覆われていた。それを突破して地表へと降下するには、優秀なナビゲーターが不可欠だったが…傑作ハードSF活劇いよいよ開幕。

カバーより

あらすじ

麻薬組織の追跡を振りきり、とある恒星系に逃げこんだミリガン運送のロイドとマージ、そして新任航法士の少女メイ。愛機の故障による窮地から3人を救ったのは、ガス惑星フェイダーリンクのリング上で暮らすコロニーの人々だった。しかし、星系政府が推進するフェイダーリンクの太陽化計画によって、彼らの居住地は消滅の危機を迎えていた。恩義に報いるため、ロイドらは一計を案ずるのだが…傑作ハードSF活劇第2弾。

カバーより

 ゲームデザイナーだった作者が、仕事で関わったTRPGの「クレギオン」の設定を基に書き上げられたスペースオペラシリーズで、『ヴェイスの盲点』がデビュー作だそうだ。キャラクターの設定や展開などが、良くも悪くもジャパニーズアニメ的。とても馴染みやすい反面、型にはまりすぎている気もする。これを読んで思い浮かぶのは、映画の一場面ではなく、アニメの一場面だろう。人によって好みが別れる所かもしれない。とはいえ、SF的な部分はそれなりにきっちりしているし、じゅうぶん面白い。ライトタッチでとっつきやすく読みやすいので、これからSFを読み始めるという人には最適だろう。


 『ヴェイスの盲点』は、種明かしの部分が読んでいる途中にだいたい推測できた。『フェイダーリンクの鯨』は、メイがリングでデートをするシーンが印象的。萩尾望都氏の漫画『X+Y』にもこんな感じのシーンがあったなぁ。土星のリングもこんな感じなのだろうか。『フェイダーリンクの鯨』には、差違の中からこそお互い学べる部分が生じるといった考え方が根本にあって、こういう考え方のできる作家は好きだ。また、個人的にはロイドのようなキャラクターは好きなのだが、物語の中ではともかく、実際にこういう人物が身近にいると疲れるかもしれない。