The 100/ハンドレッド

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核戦争から約100年後の世界で、生き延びるために戦う人々を描いたサバイバルなSFドラマ。

人類は滅亡しかけているにもかかわらず、居住可能なスペースや物資に対して人間の数が多すぎるため、常に問題が起きる。多数を救うために少数を犠牲にせざるを得ず、それが恨みを買い、報復される。登場人物たちは良い人間であろうと努力するが、厳しい決断を迫られる。

他者を犠牲にしなければ生きられない逼迫した世界で、はたして正しい行動が選択できるのか。これがこのドラマの大きなテーマだ。

人があまりに死に過ぎるため好き嫌いは分かれるが、主人公たちは次から次へと困難な状況に遭遇し、それを何とか乗り越える。けれども、間際で誰かが裏切ったり、予想外の困難にさらに見舞われたりと、ピンチはなかなか切り抜けられない。目まぐるしく変化するストーリーが面白い。また、タブーにもかなり切り込んだ意欲的な作品だ。アメリカでは、この内容でTVドラマとして放映できるとは。

人間関係も興味深い。当初は意見が合わず嫌い合っていた登場人物たちも、試練を一緒に乗り越えるうちに、固い絆で結ばれていく。この複雑な人間関係も面白い。ステレオタイプな関係ではないところが良い。

また、SFとしても面白い。100年前の天才科学者ベッカが作りあげた、AIや黒い人工血液、人格のデータ保存といった技術が厄介な問題を引き起こし、人類の存続を脅かす。核戦争がなぜ起こったのかも、次第に明らかになってゆく。

シーズン6では舞台は太陽系以外の星系へも移り、SFらしさが増している。アノマリーなる謎の光の場所から、時間の流れが異なりそうな人物まで登場する。続きが待ち遠しい。

以下、あらすじを紹介しているが、かなりネタバレもあるので読みたい方のみどうぞ。画像はNETFLIXの各エピソードの画像からピックアップしたが、もっといいシーンや内容の伝わる画像もあるはずなのに、あまりいい画像が掲載されていなかった。もっとSFらしい画像を紹介したかったのに残念だ。

シーズン1 滅びゆくアークから地球へ

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主人公のクラーク・グリフィンは、宇宙ステーションアークから、97年前に核戦争で焼き払われた地球へと送り込まれた。地球は居住可能かどうか分からず、地上の人類は死に絶えたと思われていた。だが、アークは老朽化が進み限界が近づいていた。人口削減と地球の状況確認のために、アークの議員たちは未成年の囚人100人を地球へ送り込んだ。しかし、着陸の際、通信機が故障した。地球の状況は、彼らの生体反応を伝えるリストバンドでしかわからなくなってしまった。

ベラミーは、地球へ送られる妹のオクタヴィアを心配し、取り引きをして宇宙船に潜り込んだ。アークでは子供は1人しか許されていなかった。密かに生み落とされたオクタヴィアは、床下に匿われて育てられた。しかし、彼女が16歳の時これが発覚。母親は処刑され、オクタヴィアは囚人となった。この兄妹の強い絆も見どころの一つ。腕っ節も強く指導力のあるベラミーは、不良たちのリーダーとなり、やがてクラークとともに仲間を率いていく。

地球へ降り立ち解放された若者たちが浮かれるなか、クラークは食料があると示されたマウント・ウェザー基地を目指す。しかし、同行したジェレミーが槍で襲撃され、連れ去られた。地球には人間が生き延びていたが、地上人グラウンダーは敵対的だった。さらに、酸の霧にも行く手を阻まれた。また、メンバー同士の間でも不和が起き、殺害される者まで出た。ひねくれ者のマーフィーが、諍いの火種となってゆく。

一方、アークでは、最高議長のセロニアス・ジャハが襲撃を受けて危険な状態だった。副議長のマーカス・ケインが代理を務め、クラークの母で議員でもあるアビーと対立する。

アビーは娘のクラークを生き延びさせようと地球へ送ったが、100人のリストバンドには次々と死亡の表示が出ていた。ケインはそれを地球が居住不可能な証とみなす。人類を滅亡から救うため、彼はさらなる人口削減計画を実施しようとした。アビーはそれを阻止するために、天才的な技術者レイヴンにある計画を持ちかけた。

シーズン1では、グラウンダーたちとの戦いと、宇宙ステーションアークの窮状が描かれる。ますます逼迫するアークでは、少数を犠牲にして多数を助けようとしたり、自分だけは助かろうとする者がいたりと、緊迫した状況が描かれる。

シーズン2 マウンテン・マン

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シーズン2で、クラークたちはマウンテン・マンに保護される。好戦的で未開部族のようなグラウンダーとは異なり、彼らは科学力を維持し、文明的な生活をしていた。しかし放射能汚染に弱く、マウント・ウェザー基地の外では生きていけなかった。手厚いもてなしにもかかわらず、疑念を持つクラーク。また、戦いの最中はぐれたベラミーやフィンたちの安否もわからなかった。

逃げ延びていたベラミーたちは、地球へ到着した大人たちと合流した。船からステーションへと移るも、指揮権と自由を奪われ、仲間を助けに行けず焦るベラミー。ケインはグラウンダーと和平を結ぼうとしていた。しかし、フィンの暴走で事態は悪化。グラウンダーの総帥レクサはアークの人々に、自分たちの土地から出ていくよう通告した。

マウント・ウェザーのジェレミーたちは、マウンテン・マンのマヤの協力を得て、脱出しようと試みる。はたしてアークの人々はグラウンダーを説得してマウント・ウェザーの仲間を助けられるのか。クラークは努力するものの、厳しい決断を何度も迫られる。

一方、ケインやアビーと意見の異なるジャハは、マーフィーたちを引き連れて、誰をも受け入れてくれるという光の町を探すためにステーションを旅立った。困難な旅路の果てにジャハがたどり着いた先では、アリーが彼を待っていた。

シーズン3 光の町

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シーズン3では、グラウンダーの部族の間でもアークの人々の間でも内紛が起き、両者の対立も深刻になる。

シーズン2から3ヶ月。12の部族を束ねるグラウンダーの総帥レクサは、クラークを説得して、アークの人々を13番目の空の民として部族に迎え入れた。レクサは、血を血で洗わない新たな道を進もうとしていた。

しかし、グラウンダーの部族の中には、この弱腰の政策を受け入れないものも多く、氷の国が反逆を企てていた。氷の国のイケメン王子ロアンと決闘することになったレクサ。クラークはレクサを救おうと画策する。

だが、空の民が事態を悪化させた。氷の国に落下したアークの人々は、グラウンダーとの戦闘を乗り越えてようやくケインたちと合流した。彼らはグラウンダーを信用せず、戦争を主張した。率いてきたパイクが新たな議長に専任されると、ケインの生温い政策を批判し、強硬路線を進み始めた。パイクは、ベラミーも従えグラウンダーを襲撃し始める。

ケインが説得するもパイクは耳を貸さず、反対する者を容赦しなかった。これまでグラウンダーとの架け橋を務めてきたオクタヴィアは、森の民に警告しようと動くが、事態は悪化する。

そんななか、ジャハが光の町から戻ってきた。この町へ行く鍵だというチップを飲み込むよう、人々に勧めて回る。レイヴンはチップを飲んで痛みが消え、アリーが見えるようになった。AIのアリーは、アークにあるはずの改良版AIを探すために、レイヴンの協力を必要としていた。アリーを開発したベッカは、アリーの致命的な欠陥を修正するために、改良版AIを作成していた。

グラウンダーの首都ポリスでは、クラークとマーフィーがとんでもない事態に巻き込まれていた。魂の番人フレーム・キーパーがレクサからフレームを取り出す様子を目撃する二人。総帥は代々闇の血を持ち、フレームを体内に埋め込んでいた。総帥の魂が代々受け継がれるというグラウンダーの言い伝えは、実は迷信ではなかった。このフレームは闇の血を持たない者が埋め込むと死んでしまうため、総帥は闇の血を持つ者に限られた。

クラークは、氷の国の闇の血オンタリが新たな総帥になるのを防ぐため、闇の血のルナを探しに旅立った。しかし、途中立ち寄ったステーションはすでにアリーに支配され、一変していた。クラークたちはレイヴンの体内のチップを無効化しようと試みる。

しかし、ジャハとアリーはグラウンダーの内部にも入り込み、首都ポリスを支配してしまった。アビーやケインまで支配される。多くの人々がアリーに操られて行動するなか、クラークはアリーを停止しようと光の町へも赴く。クラークはアリーを阻止できるのか? 助っ人で現れるレクサがカッコいい。

シーズン4 プライムファイアに備えて

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シーズン3のラストで、アリーは次なる試練を指摘した。プライムファイアが半年後に迫り、地球を焼き尽くそうとしていた。

人々が正気に戻ったポリスでは、総帥不在のまま氷の国の王ロアンが実権を握った。空の民はアリーを持ち込んだことなどで非難を受けるが、ロアンには、皆が助かるためにはプライムファイアへの備えが必要だと告げて猶予をもらう。

しかし、有効な対策が見つからなかった。クラークたちはアルカディアを修繕してプライムファイアを乗り切ろうとする。とはいえ、100人しか収容できなかった。パニックを恐れ公表できないまま、収容すべき100人の選定を余儀なくされるクラーク。

だが、ロアンは空の民が自分たちだけ助かろうとしているとみなし、大軍を率い奇襲をかけて来た。また、他の部族の間でも抗争が激化し、グラウンダーの同盟は崩壊しかけていた。

そんななか、ルナが海の民を率い助けを求めてやってきた。放射能汚染で彼らはもう手の打ちようがなかった。しかしルナだけは快方に向かった。闇の血には放射能に耐える能力があった。

アビーたちはルナを連れて、ジャハがAIを見つけた島へ向かう。そこには闇の血を作ったベッカの大規模な研究施設が残されていた。データベースを頼りに血清を作ろうとするアビーたち。

レイヴンがある条件下でならDNAとうまく結合できると閃いた。また、この研究施設には、そこに行くための設備まで整っていた。ハイテンションで準備を進めるレイヴン。しかし、発作を起こした彼女の脳には異常が見つかり、死にかけていた。

闇の血を作るためにクラークたちも奔走する。しかし妨害されて燃料が足りなくなってしまった。

もうひとつの、ルナの骨髄を使って血清を作り出す方法を検討するアビー。1人を犠牲にし、もう1人を闇の血に変えることに成功したものの、放射線に耐えうるかどうかを人体実験することが出来ず、暗礁に乗り上げる。

この窮状を打破したのがジャハだった。宗教団体が残したシェルターを探していた彼の努力がついに実を結んだ。だが、シェルターには1,200人しか収容できず、他の部族が黙っていなかった。ここへ入ろうとした部族が互いに争い始め、戦争を回避するためにグラウンダーの神聖な伝統に則って、決闘で決着をつけることになった。

13部族がそれぞれ代表戦士を出し、最後に生き残った1人がシェルターに入る部族を指定できる。空の民からはオクタヴィアが戦士に名乗り出た。ルナやロアンの戦闘シーンは見応えがある。

しかし、ジャハとクラークは人類を救うために自分たちが最善と信じる方法を選択した。難しい立場に置かれるオクタヴィアとケイン。裏切りに続く裏切りで、どう決着がつくのか予測できない。はたして戦いが終わる日は来るのか。

プライムファイアが迫る中、ベッカの研究室に1人残っていたレイヴンを、クラークやベラミーが迎えに行く。モンティたちも合流したが、トラブルでもう間に合わなくなった。シェルターに戻るかレイヴンを迎えに行くか、選択を迫られる。クラークは解決策を見つけた。しかし時間が差し迫り、準備する作業はぎりぎりの綱渡りの状態が続く。仲間のために犠牲となる決意を固めるクラーク。ついにプライムファイアが地球を飲み込む。

シーズン5 ただ1つの谷

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シーズン4のラストには、プライムファイアから6年後のクラークが登場し、ベラミーたちに無線で語りかけていた。地球は居住可能となったが彼らから連絡はなく、生死すらわからなかった。また、アビーたちが避難したシェルターも瓦礫に埋もれ掘り出せなかった。そこに宇宙から船が降りてきた。船体には囚人移送船と書かれていた。

闇の血のおかげで生き延びたクラークは、唯一緑の残っていた谷で、闇の血の子供マディを見つけた。2人で暮らしていたが、やってきた囚人移送船のディヨザたちが谷を占拠し、クラークを捕らえた。

一方、アークの指令船で暮らしていたベラミーたち7人は、燃料不足と無線の障害で地球へ戻れずにいた。そこに現れた宇宙船から移送船が地球へ向かった。残された母船には極低温睡眠中の囚人たちしかいなかった。燃料を手に入れベラミーたちは地球へ向かう。痛めつけられるクラークの前に現れたベラミーは、ディヨザに取引を持ちかけた。

大勢のグラウンダーが避難したシェルターの内部は、悲惨な状況だった。オクタヴィアは「暗黒時代」を経て血の女王ブラドレイナと呼ばれるようになり、民を恐怖心で統治していた。また、1,200人いた民も800人にまで減っていた。しかし、部族の壁は取り払われ、グラウンダーは「1つの民」として結束していた。

そんな限界に近い状態で、1つの民はベラミーに救出された。再会を喜ぶクラークとアビー。だが、取り引きを反故にしてディヨザはアビーとケインを連れ去り、クラークの谷を占拠した。また、母船にいたレイヴンたちも捕まってしまった。

オクタヴィアは谷への進軍を決意した。シェルターの水耕農場はもう限界だった。オクタヴィアの変わりように戸惑うベラミー。彼女は裏切り者を容赦せず、クラークやベラミーが進軍を止めようと妨害するも、耳を貸さなかった。クラークとインドラはマディに協力を依頼する。だが、クラークはこれを受け入れられなかった。怒りで暴走するクラーク。

オクタヴィアは1つの民の退路を絶ち、進軍させ始めた。しかし、ディヨザたちも一枚岩ではなく、マクレアリーたちが反乱を企てていた。マーフィーたちはチャンスを捉えて逃げ出し、ケインは谷で共存する約束をディヨザに取り付けたが、アビーは治療を必要とするマクレアリーたちに捕まってしまった。

また、エコーの妨害工作もばらされてしまった。オクタヴィアの軍隊を全滅させようとするマクレアリー。進退極まる状況を打破して、1つの民は谷で平和に暮らせるようになるのか?

このドラマでは、同じようなシチュエーションが何度も繰り返されている。

残されたわずかなものを奪い合い破壊し尽くす。大義名分のもと少数を犠牲にして多数を助ける。でも、自分の家族や恋人だけはなんとか守ろうとする。こうしたことを繰り返すたびに、多くの人々が犠牲になり、資源も食料もますます枯渇する。

この連鎖を断ち切らない限り平和に暮らすことはできないと思うが、今回ひとつだけ負の連鎖を断ち切れた。シーズン4とよく似たラストだったが、今回は誰も取り残されなかった。また、少なくともモンティとハーパーは平穏な暮らしを手に入れた。それだけは良かったものの、破壊し尽くし、人類の存続すら危うくする人間の業の深さに気が滅入る。問題は人類でないことをまさに願いたい。

シーズン6 聖域(サンクタム

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シーズン6では舞台は太陽系から離れ、エリギウス3号船が移住に向かったアルファ星へと移る。

母船のエリギウス4号で10年間を極低温睡眠で眠ることにしたクラークたち。だが、モンティの計らいでクラークたちは、125年後にアルファ星の軌道上で起こされた。エリギウス社は、採掘船だった4号船の前に3号船をこの星系へ送り出していた。

だが、太陽が2つある美しい景色や、和やかそうに暮らすサンクタムの人々とは裏腹に、アルファ星もそこに暮らす人々も凶暴だった。

この星では地下で毒が生成され、赤い太陽が登るとその毒が植物から空気中に放出された。これにより虫や人間が攻撃的になり、深刻な悲劇をもたらした。

エリギウス3号船の末裔は、放射線シールドで守られた高台にあるサンクタムで暮らしていた。当初クラークたちは移住を受け入れて欲しいと、プライムを代表するラッセルに願い出ていた。サンクタムでは、最初に入植した4家族がプライムとして統治し、人々から神として崇められていた。しかし、放射線シールドの外の森には反乱軍がいた。ちょうどプライムの重要な儀式である命名式が行われようとしていて、反乱軍はこれを妨害する。

命名式でプリヤ7世の名を継いだ酒場の娘は、別人となっていた。次第に明らかになるプライムの秘密。初期の入植者は身体にマインドドライブを埋め込んでいて、それには黒い血を持つホストが必要だった。しかし、黒い血を持つ者はなかなか生まれず、プライムは滅びかけていた。反乱軍の妨害で娘ジョセフィンの予定を大きく狂わせられたラッセルは、強硬手段に出た。狙われるクラーク。

ラッセルが復活させたジョセフィンは、マーフィーやアビーを唆して、闇の血に変える技術を得ようとした。弱点をつかれたアビーは、ジョセフィンの母シモーヌとともに母船へ向かい、願いを叶える。しかし、それは当の本人にとっては受け入れがたいものだった。

プライムの秘密を知ったベラミーたちは、クラークが別人だと気がついた。しかし、アリーのチップ*1のおかげで彼女はまだ生きていた。ベラミーたちはクラークを助けようと力を合わせる。反乱軍の長老のガブリエルに救いを求め、ベラミーはジョセフィンを森へ連れて行った。

一方、オクタヴィアとディヨザは、森で逃げた反乱軍のエグゼビアを追いかけた。オーロラのような光を浴びたオクタヴィアは、腕が石化し始めた。長年アノマリーの研究を続けてきたエグゼビアは、2人をアノマリーへと連れて行く。母船から見えたオーロラのような光の渦巻く場所がアノマリーと呼ばれていた。幻影に導かれてアノマリーに入って行くディヨザ。オクタヴィアもそれを追う。

ベラミーたちはクラークを取り戻せるのか、闇の総帥に支配されたマディや、サンクタムで捕まってしまった仲間たちは助けられるのか。事態は目まぐるしく変わり、ますますピンチになってゆく。プライムの装束のアビーが威厳に満ちていて迫力がある。

マーフィーは仲間を裏切るのか、ベラミーとオクタヴィアは兄妹の絆を取り戻せるのか、これらも見どころのひとつ。

「立派よ マーフィー」
「気を付けろ 彼女ならジョンと呼ぶ」

この短い会話と視線に、それぞれの決意が凝縮されていて心憎い。

ラストに大きな謎を残したままシーズン6は終わっていた。アノマリーからやってきた謎の女性が、ディヨザのことを伝える。そしてオクタヴィアは…。シーズン7はどうなるのだろうか。アノマリーの中へと向かうのだろうか?

気になる伏線もいくつかある。闇の総帥はどこに消えたのか。エコーの身の上話は今後関わってくるのか。ジョーダンの持っていたマインドドライブは何か。可能性としては、プリヤが返してもらったライカーのマインドドライブだろうか?

さらに闇の血の持ち主も3人増えた。そのうち2人にはマインドドライブも入っている。ベッカの技術はまだまだ問題を引き起こしそうだ。クラークたちが平和に暮らせる日は来るのだろうか。

クラークとベラミー

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強い絆で結ばれているクラークとベラミー。いずれは恋人同士になるのかと思いきや、なかなかそうはならない。

大抵クラークが仲間から離れている隙に、ベラミーはちゃっかりと恋人を作ってしまう。これは殺されるための布石?と思っていたら、印象の薄い最初の恋人は案の定すぐに殺された。けれどもベラミーは傷心していたし、クラークも女性に走っていた。

次の恋人エコーは戦闘能力に長け、ちょっとやそっとでは死にそうにない。おそらくクラークと戦っても、エコーの方が勝ち残るだろう。仲間としての信任も厚い。

それがここに来て、なんとも意味深なエコーの思い出話と、闇の血にされてしまうという展開だ。私の妄想では、消えた闇の総帥がエコーの身体で復活し、いろいろあってエコーは華々しく死亡、クラークとベラミーはめでたしめでたし、ではないかと期待しているが、どうなるだろうか?早く続きを観たいものだ。

*1:ここは少し疑問が残る。クラークにはアリーのチップはないはずだからだが、何かの伏線になっているのかもしれない

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セール対象作品著者

なかなかの顔ぶれです。往年の作家の作品だけでなく、比較的新しい作家の作品も揃っています。せっかくなので、最近読書量が落ちているためまだ購入していない、ケン・リュウ作品あたりを揃えたいと考えています。

『天冥の標』シリーズ

シリーズ一覧

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『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ』(下)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150309695

『天冥の標Ⅱ 救世群』
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150309886

『天冥の標Ⅲ アウレーリア一統』
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310035

『天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち』
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310332

『天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河』
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310509

『天冥の標Ⅵ 宿怨』(Part1)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310677

『天冥の標Ⅵ 宿怨』(Part2)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310806

『天冥の標Ⅵ 宿怨』(Part3)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150310943

『天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC』
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150311391

『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク』(Part1)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150311599

『天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク』(Part2)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150311698

『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと』(Part1)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150312138

『天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと』(Part2)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150312312

『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ』(Part1)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150313555

『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ』(Part2)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150313593

『天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ』(Part3)
早川書房 刊 / 小川一水
ISBN:9784150313623

均一化 vs 多様性

『天冥の標』でシリーズを通して貫かれているテーマは、均一化を強制する者たちとの闘いだ。

「徹底的な均一化」を戦略とする最大の敵ミスチフを筆頭に、残忍な軍警ザリーチェや、95%を死滅させる冥王斑という病気そのもの、人気者だった頃の千茅、「未知への愛」が無い海賊たち、弱者を容赦なく切り捨てるロイズ保険社団とその子会社のMHD社、偏った倫理観で殺戮する倫理兵器エチック・ウェポン、全人類を無理やり《救世群ラクティス》にしようとするミヒル、個を犠牲にして超新星爆発を引き起こそうとするオンネキッツなど、程度の差こそあれ、異質なものやマイノリティを認めず切り捨てる行為が繰り返される。

こうした敵に対し、主人公たちは多様性を大切にする。イサリやカドムは「気に入らない相手でも滅ぼしたりまでしたくない」「自分たちだけでなく、外に豊かな何かがあって欲しい」と願う。エランカは「人間の考える豊かな国と未来には、《恋人たちラバーズ》やカンミアも含むことができる」と人間以外の者たちにも同等の主権を与える。青葉は迫害される《救世群ラクティス》代表の千茅に「あんたたちが消えていい訳がない」と手紙に書く。

だが、それだからこそ、決着をつけるのが難しそうだとずっと思っていた。

均一化を強制する者が勝つなら話は簡単だ。単に相手を滅ぼしてしまえばそれで良い。矛盾もしない。しかし、多様性を大切にする者が勝つためには、自己否定になるため、相手を滅ぼして終わりにするわけにいかない。作者がこれにどう決着をつけるのか注目していた。

この難題は突き詰められ、「進化していない者 vs 進化を繰り返した者」という、生物的な次元に行き着いた。

均一化の代表ミスチフは、進化も繁殖もせず、ただ一個体のみで拡大してきた。カドムたちはこれに、進化で獲得した免疫を用い対抗する。まさに多様性の賜物だ。

しかし、こうなると均一化と多様性の問題は、善悪でもなければ好き嫌いでもなく、正義かどうかでもなくなった。こんな論点に落とし込んで難題を解決するとは、さすがである。

また、ミスチフへの対抗策をめぐり繰り広げられたオンネキッツたちとのメタ進化の議論もとても面白かった。

ラゴス

ラゴスのことはよくわからない。男娼ではあるが、最初は理想の男性像のように描かれていた。屈強な体格、ムスクの香り、完璧な技巧とタイミング、何より自分の意見を女性に押し付けない控え目な態度。エランカは彼との子供を作る代わりに、革命を率い大統領にまでなった。また、彼自身はアクリラに絶対の協力を約束し、革命を担う市民の一員として活躍していた。

だが、記憶を取り戻してからのラゴスはいかがなものか。冠絡根環カンカラコンカンへはMMS交渉団として《救世群ラクティス》を代弁するために行ったはずなのに《恋人たちラバーズ》の目的を優先したり、つれなくされて茜華根禍アカネカを口説こうとのめり込んだり、身勝手が目立つ。茜華根禍アカネカたちに人間の生殖行動を実演して見せるに至ってはもはやギャグだし、何よりここまでしたエランカの元へ戻らないのは、ヒトとしてどうなのか。もちろんヒトではないのだが、他も選べるという選択肢を得てなおエランカを選ぶ意思こそが、主体ではないだろうか。

彼以外の《恋人たちラバーズ》も、同じように主体獲得を試みていた。人間に逆らい反撃したベンクトやオーロラ、ヒトになりたいとミヒルに寄り添った一旋次、愛する人を得て共に闘ったゲルト、大きなダメージを受けてなおイサリを笑わせようとするスキットル。彼らと比べても、ラゴスの方向性はずれていないか。

従属する相手を自ら選ぶことで主体を獲得するという理屈はわからなくもない。しかし、これは、人類全体の中から《救世群ラクティス》を主人に選んですでに試し、失敗したのではないか。

ノルルスカインは、面倒を見すぎるとダメになると、人間に対して最低限の干渉しかしなかった。だが、《恋人たちラバーズ》は《救世群ラクティス》の要求に従いすぎ、歯止めが効かなくなり最後は放り出した。茜華根禍アカネカを主人としても同じことになるのではないか。

それに混爾マージを超えるものを探すといっても、巨大な樹木のような茜華根禍アカネカ相手に何をするのか。蜂みたいに受粉を手伝うのだろうか?《恋人たちラバーズ》を創り出したウルヴァーノもびっくりだ。

主体がないからこそ女性にとって理想の男性像だったラゴスは、主体を獲得し、ただの女たらしになる自由を得た。それもまた主体なのかもしれない。エランカの方でも未練は無いようだからそれでいいのかもしれない。

カルミア

カルミアンの呼び方は色々あってわかりづらい。「カンミア」が生物学的種族名、「カルミアン」は《救世群ラクティス》がつけた呼び名、「石工メイスン」はMMSの人々がつけた呼び名、「ミスン族」は情報生命体となった状態、「イスミスン族」はミスン族がいくつか集まって被展開体となった状態か。そもそも被展開体自体よくわからないので、合っているかどうかわからない。巻末の用語説明でこのあたりの違いを説明してほしかった。

愛すべきエイリアンの彼女らには、ぜひとも人類の傍らでちょこまかしていてもらいたい。

未来の地球

このシリーズでは、もしセレスの地下でMMSの人々が生き延びていなければ、太陽系の人類は滅亡していたかもしれない。

地球では、戦争が始まるずっと前に《救世群ラクティス》を全員宇宙へ追いやっていたため、血清がなかった。これが災いし、ウイルスが撒かれると生き延びることができず、ヴァンディたちが2530年に地球に降りたときには、誰もいなかった。

かろうじて生き延び繁栄したMMSにしても、当初は子供しかいない実に大変な状況だった。ジニ号の物資やロイズのロボット類の操作権限、ダダーのノルルスカイン、カルミアン、《恋人たちラバーズ》等、もしどれか一つ欠けても生き延びることができなかったかもしれない。

翻ってみると、現実ではどうだろうか。今から500年後、800年後、1000年後、人類は生き延びているのだろうか。

現在自然は急速に破壊され、多くの動植物が絶滅しつつある。災害の猛威も半端ない。待った無しの状況に思える。

それに、核兵器原子力発電所など、ひとたび事故が起これば人間の手にあまる技術も使い続けている。思いおこせば、第1巻『メニー・メニー・シープ』の電気が逼迫する物語は、福島の原発事故直後の計画停電のさなか、現実とのシンクロを感じながら読んでいた。もし地震やテロで原発が破壊されれば、深刻な被害が出るだろう。だが、日本で核エネルギー廃絶への政策転換は、まだたいして進んでいない。

また、カルミアンがいないからクラスト化はされないが、遺伝子工学の技術は急速に進んでいる。これも人間の手に負えなくならないか。安易に遺伝子をいじって不妊や予期せぬ弊害が出たり、レッド・リートのような危険な動植物を生み出さないとも限らない。

はたして500年後の未来がどうなっているのか想像もつかないが、人間と人間の外の世界がまだ存在し、できれば豊かであってほしいと切に願う。